北朝鮮は変化できるか

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日朝会談に意欲を見せるなど、最近の北朝鮮には変化の兆候らしきものが感じられる。まず金日成時代には先軍政治一点張りだったものが、最近では経済の立て直しと、国民の生活向上が、金正恩自らの口から発せられるようになった。日本との関係改善の試みも、日朝間の懸案を少しでも解決して、日本から経済的な援助を引き出そうとする意思が働いているものとみえる。

北朝鮮の自主的な経済政策としては、最近打ち出された農業政策が専門家たちの注目を集めている。これは、農家にある程度の自主性を認めようとするもので、一定のノルマを達成すれば、それを超えた部分は自由に処分しても良いとする政策である。中国が1970年代末期に採用した農業政策を意識したものだろう。

中国ではこの政策は改革開放路線の目玉の一つとなり、その後の経済発展の原動力となった。北朝鮮もそれにならって、停滞している農業生産をとりあえず高めようというのであろう。

この政策では、いままで10戸乃至25戸前後で構成されていた集団農場の規模を4個乃至6戸程度に縮小させ、個々の農家の自発性を高めようとする政策とセットになっている。縮小した集団農場の構成農家は、これまでよりも強い自主性を以て生産に励み、自分の手元に残る剰余分を最大化するように努力するだろうと期待されているわけである。

しかしこの政策は、北朝鮮の体制にとっては、破壊的な効果をもたらさないとも限らない。個々の農家の自主性の強化が、経済一般の改革開放への圧力として作用し、社会主義的計画経済から資本主義的な自由市場経済への変化の推進力となるだろうからだ。

中国の場合には、改革開放路線を、共産党による一党独裁の枠組みに中で制御できたのだったが、北朝鮮にもそれができるとは限らない。そこで金正恩政権は、この政策を一定の地域に限って限定的に実施し、うまくいかない兆候があらわれたら、すぐに中止する積もりでいるらしい。

ともあれ、北朝鮮がこうした政策を模索するようになったということは、北朝鮮全体が今後改革に向かって進んでいくための一歩を踏み出したのだと、考えられないわけでもない。だが、先走りは禁物だ。

金正恩の最大の関心事が、金王朝の体制維持にあることは間違いない。経済の改革といい、国際関係といい。その是非はあくまでも体制維持との調和においてのみ判断されるだろう。したがって、体制を脅かすような要因があれば、どのような政策も直ちに中止されることとなろう。

当面は、体制維持が図れるという見込みがある中で、最大限の改革開放を試みてみよう、というのが金正恩のスタンスだと思われる。(映像はWPから)

(参考)In authoritarian North Korea, hints of reform By Chico Harlan  WashingtonPost





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