画家 安野光雅 「雲中一雁」の旅

| コメント(0)

120911.anno.jpg

NHK・Eテレの「日曜美術館」が安野光雅さんを取り上げた。日頃から安野さんの大ファンである筆者は夕食を早めに切り上げて、午後8時からの画面に食い入った次第だ。題して<「雲中一雁」の旅>


「雲中一雁」について、安野さんは最近出版した自伝のなかで次のように書いている。「雲の中で群れに遅れたのか、はぐれたのか、一羽の雁が飛んでいく。絵描きの自分もそんなもんかなと」(絵のある自伝)

安野さんが孤高に見えるのは、別に群れからはぐれたわけだからではない。安野さんの画業が他の追随を許さないほどユニークであることのあかしだ。そんな安野さんの絵を、筆者はずっと手本としてきたが、なかなかまねのできない奥ゆかしさを感じ続けてきた。

安野さんといえば「旅の絵本シリーズ」が有名だ。第一冊目の「中部ヨーロッパ編」から始まり、イタリア、イギリス、アメリカ、中国などすでに7冊が出ているが、86歳になる今、最新作として日本の風景を描いているそうだ。

安野さんの出身地は津和野。森鴎外の故郷だ。そこで安野さんは旅館の子どもとして生まれた。しかし旅館の経営には興味がわかず、小さい頃から画家になりたいの一念を抱いた。そしてその一念をかなえ、見事自力で画家になった。

故郷津和野の風景を描いた本を安野さんは出版したことがある。それは絵本というより短い説明つきの画集というべきものだった。安野さんには、そうした画集が沢山ある。しかし今用意している旅の絵本日本編は、絵本らしい絵本のようだ。

旅の絵本シリーズのほかに番組は、デビュー作の「ふしぎなえ」や「あいうえおの本」などを紹介していた。これらはエッシャーの絵に触発されたと安野さん自身がいっているように、複数の視点を絡ませることで、絵に不思議な立体感を持たせたものだ。旅の絵本シリーズとともに、安野さんの国際的な名声を高からしめた作品である。

番組に出ていた安野さんは86歳の高齢には見えなかった。創造への情熱が実際の年齢より若く見せているのだろう。しかし8年前には狭心症で倒れ、その直後には肺がんになるなど、決して順調な人生ではなかったそうだ。それを乗り越えたのもやはり、創造への情熱がしからしめたのだろうか。(絵は日本編への掲載予定作品)





コメントする

アーカイブ