ロムニーの金権主義

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米共和党大統領候補ミット・ロムニーが政治資金パーティーで発言したという内容が論議を呼んでいる。その中でロムニーは、「アメリカ人の47パーセントは全く所得税を払っていないから、私の減税政策は彼等には縁がないし、私も彼らのことを気にかけるつもりはない」と発言した。更に、「彼等は、"自分たちは社会の被害者であって、政府はそんな自分たちの面倒を見る責任がある"と考えている」とも発言した。

こうしたロムニーの発言は、貧乏人に対する侮蔑的な意識が表に現れたものであり、ロムニーの金権主義的な体質を如実に物語っているとの批判が巻き起こっている。ロムニーは自分の発言が誤解されていると言い訳に大わらわだが、仲間の共和党議員からも愛想を尽かされるなど、その立場は微妙だ。

ロムニー自身は、支持者の集会でのことでもあり、多少気が緩んでこんな発言をしたのだろう。しかし支持者の集会といえども、敵の回し者がもぐり込んでいるというのが、アメリカの政治舞台の特徴だ。ロムニーは油断しすぎたといってよい。つまりワキが甘いのだ。

ロムニーの発言内容については、それは事実ではないという指摘が相次いでいる。ロムニーは、アメリカ人の半分近くが全く税金を払っていないような言い方をしているが、そんなことはない。低所得者は、確かに連邦所得税は払っていない。しかし、社会保険料、消費税、地方税などは払っている。その額を下位五分の一の低所得層について計算すると、所得の四パーセントになる。次の五分の一の層については十一パーセントだ。決して高いとは言えないかもしれないが、相応の負担はしている。ロムニー自身だって、巨額の所得がありながら、払った税金は所得の二十パーセントに達していない。

大勢の人々が連邦所得税を払っていないという事実は、過去二十年間にわたって続けられてきた課税最低限の引き上げの結果だ。そしてその政策を熱心に行ってきたのはフォードとブッシュ、つまり共和党政権だったということを忘れてはならない。

ロムニーの発言が自家撞着に陥っているのは、彼が言及した人々の中には膨大な数の年金生活者が含まれているということだ。年金生活者は、現在は所得税を払っていないかもしれないが、現役時代には相応の税金を払ってきたのだし、少なくとも現在のことについてロムニーからとやかく言われる筋合いはない、と云いたいところだろう。そしてこうした年金生活者の大部分は共和党の支持基盤の一つになっているのである。それ故ロムニーの発言は、自分の支持者たちを侮辱したということになる。

ロムニーは様々な場面で不適切発言を繰り返してきた。ロンドン・オリンピックの準備がなっていないといってイギリス人を怒らし、パレスチナ人はイスラエル人より劣っているといってアラブ社会を怒らし、中東諸国での反米デモをならず者呼ばわりして深刻な怒りをかった。そして今回の発言である。米大統領候補としては余りにもお粗末といわざるをえない。(写真はAFPから)

(参考)Romney's Flawed Lesson in Political Economy by John Cassidy NewYorker





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