日中両国民の相互イメージが極端に悪化

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尖閣諸島問題で日中関係がきしんでいるが、そのことがもとで日中両国民間の相互イメージも悪化しているようだ。それも極端に。

朝日新聞が9月24日付紙面で紹介した世論調査結果のレポートは、「日中関係 深まる溝」と題して、そんな状況の変化を分析している。

まず相手国をどう思っているかについて、2002年の調査結果と比較している。前回は日本人においては、中国が好きと答えた人が10パーセント、嫌いと答えた人が53パーセントであったのに対して、今回は好きと答えた人が10パーセント、嫌いと答えた人が63パーセントだった。中国が好きなひとの割合はこの10年間変わっていないのに、嫌いな人は増えたわけだ。

一方中国人については、前回日本が好きと答えた人が19パーセント、嫌いと答えた人が17パーセントで、好きな人の割合の方がわずかながら大きかったのに対して、今回は好きと答えた人はたったの3パーセント、嫌いと答えた人は38パーセントだった。

これを見ると、今回の相互イメージの悪化は、中国人においてのほうが大きかったといえる。

また、今後の日中関係の見通しについて、10年後にどうなっているかと聞いたところ、日本人は45パーセントが良くなっている、46パーセントが悪くなっているとほぼ拮抗しているのに対して、中国人は良くなっているが30パーセント、悪くなっているが47パーセントで、日本人より悲観的である。

そこで両国民が現在相手の国にどんなイメージを持っているかを聞いたところ、日本人は中国を、独裁国家(38パーセント)、軍事大国(30パーセント)、発展途上国(22パーセント)などと思っているのに対して、中国人は日本を、科学技術の進んでいる国(63パーセント)、経済大国(44パーセント)、独裁国家(30パーセント)などと思っている。 

日本人には、中国をまだまだ遅れた国だと思っている人が多いのに対して、中国人の多くは日本の経済力をすなおに評価する一方、日本を独裁国家だと思っている人が多いのに驚かされる。

それぞれ最初に思い浮かべる相手の国の人は誰かを聞いたところ、日本人は毛沢東(1位)、周恩来(2位)、胡錦濤(4位)といった近現代史上や孔子(5位)のような歴史上の人物を上位に挙げたのに対して、中国人においては、小泉純一郎が1位、山本五十六が3位、野田総理が5位、東条英機が6位に入っている。そのほかに名前が挙がっているのは、山口百恵(2位)、蒼井そら(4位)といった芸能人だ。蒼井そらは日本では無名に近かったアダルト女優だが、中国では大変な人気を集めているらしい。

ともあれつい最近までは、中国人にとって最初に思いうかべる日本人には田中角栄が入っていたものだ。ところが今回は17位に後退した。日中関係が急速に悪化する中で、それに貢献した人のウェートが下がって、日中関係にマイナスなイメージを喚起する人が浮かび上がったということだろう。

山本五十六と東条英機は日本軍国主義の象徴として受け取られ、小泉純一郎は頑迷偏狭なウルトラ・ナショナリストと思われている。野田総理大臣も、尖閣問題の処理を通して、中国に喧嘩を売り、日中関係を悪化させた張本人として受け取られているのだろう。(もっとも小泉純一郎は2002年の調査でも、靖国参拝問題を背景に注目度が高く、1位だった)

経済関係について聞くと、日本人は78パーセントの人が中国経済が日本経済に大きな影響を与えていると答えているのに対し、日本経済が中国経済に大きな影響を与えていると答えた中国人は44パーセントで、51パーセントがそう思わないと答えた。

今後の経済関係について、どの国との関係を重視すべきかについて聞いたところ、日本人はアメリカ(33パーセント)、東南アジア(31パーセント)、中国(24パーセント)の順だった。これに対して中国人においては、アメリカ(54パーセント)、ヨーロッパ(15パーセント)の順で、日本は東南アジアとならんで8パーセントにすぎなかった。中国人は、日本の経済力をすなおに評価しつつも、経済関係の深化には期待を持っていないということを表しているのだろうか。

尖閣をめぐる反日デモは、中国当局の抑制によって表向きは下火になったようだが、尖閣周辺では日中のにらみ合いが続き、武力衝突の可能性もゼロではない。また、中国政府は、日本を標的に様々な対抗措置を打ち出し、日中40周年の記念行事の中止を通告してきた。このまま惰性的に進んでいくと、日中関係の溝が深くなるばかりか、戦争状態にまで発展しかねない。


関連サイト:日中関係 





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