帰って来た無責任男:安倍晋三氏が自民党総裁に復帰

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自民党総裁選の結果、安倍晋三氏が総裁に選ばれた。一度総裁を務めてやめた人物が再び総裁になるのは、自民党の歴史においては初めてのことである。しかも辞任した時の辞め方が物議をかもし、党の内外から散々批判を浴びた人間の返り咲きである。どうなっているのかと首をかしげているのは筆者のみではあるまい。自民党もついに野党ボケをして、リーダーの人材にも事欠くようになったのだろうか。

安倍氏は2006年9月に小泉総裁の後を継いで自民党総裁に選ばれ、総理大臣にも就任した。しかし政権運営については評判が良いとは言えず、組閣した内閣も日頃の友人たちで固めたことから「お友達内閣」などと揶揄される始末。小泉時代の悪政で生活を脅かされていた国民の視線が自民党に厳しいものとなり、翌年(2007年)7月の参議院選挙では大敗した。その時に敗北の責任をとってやめておれば格好もついたのだろうか、本人は引き続き政権担当に意欲を示した。

ところがである。参議院選挙後に開かれた臨時国会で所信表明演説まで行っておきながら、突然辞任を表明。そのやめ方があまりにも唐突だったことから、党の内外からすさまじい批判が起きた。野党側は、「これから代表質問というときにやめるのは無責任極まりない」と怒り、身内の自民党議員でさえ「なぜいま政権を放り投げるのか、無責任だ」と非難した。

やめた理由については、病気説もあったが、本人の口からまともな説明がなかったので、いよいよ面白おかしく取りざたされたりしたものだった。やれ身体の病気ではないかとか、やれ心の病ではないかとかいった憶測が独り歩きしたものだ。

そのうち噂話もなんとやらで、批判も下火になった。そこで、安倍さんも郷里の長州にでも引きこもって、大所高所から世の中を見ていれば、少なくとも好々爺ぐらいにはなれただろうに(安倍さんの表情には憎めないところもある)、ここにきて急にもう一度自民党の総裁になりたいと云いだし、それが冗談では済まなくて、本当にもう一度総裁に選ばれてしまったわけである。

安倍さんが突然やめると云いだした時には、主に自民党の議員たちから、「何故今このタイミングで」という疑問が出されたものだが、今回の復活劇に関しては、多くの国民から「何故今このタイミングで」という疑問が出て来るに違いない。

というのも今のタイミングは自民党にとっては追い風で、次の選挙では勝利できる可能性が非常に高い。そういう時期にはフレッシュで強力なリーダーを擁し、堂々とした戦いを展開しなければならない。少し酷な云い方になるかもしれないが、安倍さんにはそんな力強いリーダーシップは感じられない。今回の総裁選で安倍さんへの地方党員の支持が弱かったのは、安倍さんにはあまり期待していないという、一般の国民感情をある程度反映しているのだと考えてよい。

そんな時期だから、今回の安倍さんの復活劇が、日本の政治にとってどんなインパクトをもたらすのか、注意深く見守っていく必要がありそうだ。(写真は時事通信のサイトから)


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