死刑囚の臓器移植:中国の移植医療

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中国は死刑大国として知られる。最近のワシントンポストの記事によれば、2011年の死刑執行件数は4000件、二位のイランが360件、5位のアメリカが43件だったから、ダントツの数字だ。それでも、2007年の執行件数8000件に比べれば、ここ数年の間に半減させてきた傾向が読み取れる。

中国で死刑囚が多いのは、死刑が適用される犯罪が非常に広範囲にわたっているからだ。日本でいえば比較的罪の軽い経済犯罪でも、中国では死刑になる場合がある。先日は5600万ドルの借金を踏み倒したとして28歳の女性に死刑判決が下された。

こんなことから、中国にとっては死刑制度の改革が課題になっていると言われるが、それ以上に深刻な問題がある。それは、死刑囚の臓器移植という問題だ。

2009年には死刑囚による臓器の移植が、全移植件数の65パーセントに上ったことを、司法当局が認めているという。この年の移植件数は10000件だったから、死刑囚による臓器移植は6500件にのぼった計算だ。この年の死刑執行の全体数が明らかでないので、どれだけの割合の死刑囚が臓器を抜き取られたか明確ではないが、ざっと計算しても、殆どすべての死刑囚が臓器を抜き取られた可能性がある。

死刑囚の臓器移植がこんなに高い割合を占めていることの背景には、臓器提供のシステムが確立していない事情がある。中国では年間210万件の臓器移植需要があるにかかわらず、実際に移植されたのは、上記のようにほんの一部分だ。臓器提供者の数が、無に等しいほど少ないからだ。それ故、臓器売買をめぐる闇市場の存在も指摘されているという。

こんなわけで、死刑囚による臓器移植は、中国の移植医療を陰で支えているかたちになっているわけだ。(写真は死刑執行用の特殊車両、死刑囚はこの車両の中で致死薬物を注射され、その直後に臓器を抜き取られる:AFPから)

(参考)Yes, China still harvests organs from executed prisoners By Max Fisher :Washington Post





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