オバマの勝利は共和党の敵失?

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オバマが有権者の支持においてはきわどいリードしか得られぬまま勝利できたことについて、さまざまな分析がなされている。そんな分析の中で目を引くのは、オバマの勝利は有権者の積極的な支持に支えられたものではなく、ロムニー側、つまり共和党による失策に利されたのだとする「敵失論」である。

ニューズウィークの最新号に乗った Paul Begala によるコラム記事 How the GOP Helped Obama Win などはその代表的なものである。

この記事は、ロムニーが犯した失策をいくつか挙げて、それらがいかにオバマにとって有利に働いたかについて、綿密な分析を行っている。こうした失策がなかったなら、ロムニーは楽に勝利できたはずだというのだ。

実際、今回の大統領選は、オバマにとっては最悪の条件の中で戦われた。最も重要な要素になったのは経済指標だ。トルーマン時代の1948年から2008年までの60年間(720か月)に、失業率が8パーセント以上だった月は39か月だった。ところがオバマが政権を担当した46か月のうち、失業率が8パーセント以上だったのは実に43か月にも上る。これがいかに異常な数字であるかは、一目してわかるだろう。景気に敏感なアメリカ人にとって、これだけで大統領失格の理由として十分である。

それなのにオバマは引き続き大統領の職を任されたわけである。ロムニーの失策がいかに深刻なものであったか、分かろうというものである。

ベガラは、ロムニーが犯した失策をいくつか挙げているが、もっとも決定的だったのは、余りにも右寄りのスタンスを取ったことだという。ロムニーは共和党内での地歩を固めるために必要以上に右寄りとなり、そのことで多くの有権者を離反させた。若しも彼がマサチューセッツ知事だった頃のように、穏健な路線を強調していたら、間違いなく勝てたはずだという。

この見方には、筆者も基本的には同意見だ。しかし、ロムニーには右寄りに傾かざるを得ない理由があった。そうしなければ、共和党の候補として生き残れなかったのである。だから、右傾化によるリスクは、ロムニー個人の問題ではなく、共和党全体の問題だったわけだ。事実、今年の共和党の予備選挙では右派旋風が吹き荒れ、そのために良識ある実力者は軒並み立候補を見送り、それに代わって小物ばかりが手を挙げた。共和党は、そのことでビッグチャンスをものにできなかったというわけだ。

共和党の右傾化の代償のうち最たるものは、非白人票やマイノリティの支持を大規模に失ったことだ。実際今回共和党が獲得した票の88パーセントは白人票だったとされる。共和党はいつの間にか、非常に狭い支持基盤の上に自分を立たせるようになっていたことがわかる。

黒人やヒスパニックなど非白人の割合は今後も増える傾向にある。したがって共和党がそれらの支持を得られないでは、ますます政権から遠ざかっていくことにつながる。狭い階層利害に執着せず、国民全体に目を配れるような政党に脱皮しなければ、共和党には未来はないといってよい。(写真はAPから)





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