安倍内閣の右傾化度

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安倍内閣の顔ぶれを見ると、党の重鎮や中堅を交え、実務能力に配慮した安定感のある布陣だというイメージを与えている。5年前に内閣を組んだときには、自分に近い者で固めて「お友達内閣」などと批判された。今回はそのことを教訓にして、少しでも国民の支持を得られるような内閣を作りたい、という安倍さんの気持ちが伝わってくる。

しかしメンバーの選定には、安倍さんの好みと言うか、政治的な配慮が強く働いていることを感じさせる。いわゆる右寄りの人が多いのだ。これは英紙「エコノミスト」の見立てだが、19人の閣僚中、14人が「靖国に参拝する議員の会」の会員であり、13人が「日本会議」の支持者だ。日本会議は伝統的な価値観を強調し、日本の戦争責任についても否定的な見解だ。また9人は「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の会員だが、これはアジア・太平洋戦争中における日本の戦争犯罪とされるものを否定する者の集まりだ。

文科相に就任した下村博文氏は、いわゆる村山談話の見直しを主張し、東京裁判の有効性に疑問を呈している。そのことから、この内閣の中でも安倍氏と並ぶハードな右翼とみられているようである。

こんなわけで、新しい安倍内閣への「エコノミスト」の評価は厳しい。安倍さん自身は「真の保守主義」を標榜しているが、これは保守と言うより「極右(Radical Nationalists)」というべきだ、と言うわけである。

その安倍さんがやろうとしていることは三つある、とエコノミストは指摘する。憲法改正、愛国教育の徹底、日米安保の見直しである。日米安保については、憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を合憲化し、アメリカと対等の関係に立ちたいという、安倍さんの長年の願いがこもっている。

憲法改正を実現するためには、参議院でも多数派にならねばならない。そこでいまは、極端に走るという印象を国民に与えるのを避けて、夏の参議院選に備えようとしているのだろう、選出前に主張していた極右的な政策は当面棚上げにされているところだ。しかし、参議院選でも勝利して両院で圧倒多数を獲得すれば、日頃の自説の実現に向かってまい進するだろうことは目に見えるところだ。そういって、エコノミストは安倍政権のこれからに気を配っている。(写真はAPから)

(参考)Back to the future Shinzo Abe's appointment of a scarily right-wing cabinet bodes ill for the region:Economist


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