醸されてもいない酒(I taste a liquor never brewed):ディキンソンの詩から

| コメント(0)

エミリー・ディキンソンの詩から「醸されていない酒(I taste a liquor never brewed)」(壺齋散人訳)

  醸されてもいない酒を
  真珠をくりぬいたジョッキで飲む
  ラインの酒樽の中にさえ
  こんな上等なアルコールはない

  大気に酔いしれ
  甘露を追い求めるわたし
  はてしのない夏の日々
  青空酒場をさまよい歩く

  酒場の亭主が酔っぱらった蜂を
  ジギタリスの扉から追い出しても
  蝶々が蜜に飲み飽きても
  わたしは断固飲むのをやめない

  すると天使たちが白い帽子を振って
  聖人たちは窓に駆け寄り
  ちっぽけな酔っ払いが太陽に向かって
  のけぞるのを見ようとした


醸されていない酒とは何をさすのか。詩は青空酒場とか、ジギタリスの扉とか、そこにいる酔っぱらった蜂に言及しているので、花の蜜あるいは露をさしているのかもしれない。その自然の醸した酒を飲んだ詩人が太陽に向かってのけぞるところを、天使たちが帽子をふりながら見ている。


  I TASTE a liquor never brewed, 
  From tankards scooped in pearl; 
  Not all the vats upon the Rhine 
  Yield such an alcohol! 
  
  Inebriate of air am I,        
  And debauchee of dew, 
  Reeling, through endless summer days, 
  From inns of molten blue. 
  
  When landlords turn the drunken bee 
  Out of the foxglove's door,        
  When butterflies renounce their drams, 
  I shall but drink the more! 
  
  Till seraphs swing their snowy hats, 
  And saints to windows run, 
  To see the little tippler        
  Leaning against the sun


関連サイト:英詩と英文学 





コメントする

アーカイブ