安倍首相のワシントン・ポスト・インタビュー騒ぎ

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安倍首相が米紙ワシントン・ポストと行ったインタビューについては、筆者も当該のワシントン・ポストの記事を読んでいた。それが中国に対してかなり挑発的に聞こえたので、ただでは済むまいと思ったところだったが、果して中国側からの激しい反応があった。ところが、その反応があった直後、菅官房長官が、ワシントン・ポストはインタビューの内容を正確に伝えていないと言い始めた。いったいどうなっているのだろうと、不思議に感じた次第だが、当事者のワシントン・ポストのほうは、そのことに関して、自分たちは正確に伝えたつもりだという趣旨の記事を、24日のWEB版に載せ、またインタビューの内容を英訳したものもアップした。ワシントン・ポストによれば、日本政府はこの英訳が間違っていないと確認したそうだ。

いまのところ安倍首相自身は、記事の内容についてコメントしていない。そのうちコメントするかもしれないが、コメントしない方の可能性の方が大きい。またその方がよいともいえる。こうした問題は、正面からとりあげると、必要以上に大袈裟になる。何しろ、記事の内容や速記録の英訳を読む限りでは、安倍首相が中国政府を正面から批判していることは間違いない。その批判を中国政府は自分たちに向けられた攻撃だと言い、それが外交儀礼を著しく逸脱した異常な行動だといっているわけだから、正面から言い合っては、互いに収拾がつかなくなる恐れが大きい。

このインタビューは安倍首相のアメリカ訪問に先立って行われた。安倍首相の訪問の目的は、日米同盟の深化の確認と、尖閣を含めた日本の防衛についてオバマ政権の強いコミットメントを引き出すことだったようだが、どうも安倍首相とアメリカ側との間には見逃せないすれ違いがあるようだ。

当のワシントン・ポストを含めてアメリカのメディアは、今回の安倍訪問をそれほど重視していない。だからほとんどがまともに取り上げてはいない。取り上げた場合にも日本のTPP参加の方に関心を示している。それはオバマ大統領が、日本との同盟関係は民主党政権の時代を含めてゆるぎないものと考えており、いまさらその意義を強調する特別の理由はないと考えていることを踏まえてのことと思われる。そこのところが、日米同盟の質的な深化を目指す安倍首相と米政権との間に温度差があることを感じさせる所以だ。

(参考)Japan says Abe's quotes about China in Post interview were 'misleading' By Chico Harlan WP 





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