エル・グレコ展を見る

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エル・グレコ展が上野の都立美術館で開かれているというので見に行った。この美術館は老朽化のため改修工事が施され、昨年その工事が終わったばかりだそうだ。改修だから外観はそっくりそのまま引き継がれている。

エル・グレコは周知のとおり、16世紀の末から17世紀の初めにかけてスペインで活躍したギリシャ人画家だ。人体を長く引き伸ばした独自の描画法で知られ、美術市場ではマニエリズムの大家と言うことになっている。筆者が好きな画家の一人だ。

展覧会では、主に三つのテーマに沿って作品を展示していた。一つ目は肖像画、二つ目は聖人画、そして三つ目は宗教画だ。

エル・グレコが画家として成功したのは、裕福な人々から肖像画の注文を受けることに成功したからだということになっている。エル・グレコは1541年にクレタ島で生まれ、そこで絵画に関する初歩的な教育を受けた後、20代後半にヴェネチアに移り、イタリア・ルネサンス絵画を本格的に学んだ後、30代後半以降死ぬまでスペインのトレドを舞台に活躍したということになっているが、トレドは当時世界でも最も豊かな国であったスペインの中でももっとも豊かな都市の一つで、金持ちが沢山いた。エル・グレコはその金持ちたちをパトロンにすることによって、画家として大成功を収める基礎づくりをしたのだった。

エル・グレコを代表する作品は、一連の宗教画だ。宗教画の中には、聖人画と呼ばれるものと、聖書に題材をとった物語風のものとがあるが、前者は肖像画の延長上に位置付けられるのに対して、後者は教会の祭壇に飾られ、信徒たちの宗教心を掻き立てることを目的としていた。エル・グレコはこの祭壇画の分野において、高い芸術性を発揮したのであった。

今回の目玉は、「無原罪のお宿り」と題する祭壇画だ。三フロアからなる会場のうち、最後のところに飾られている。観客は作品をひとつひとつ遊覧した後、最後にこの巨大な絵を遠くから仰ぎ見るというわけである。

この絵を含めて展示されているのは51点。エル・グレコの生涯にわたる画業の特徴がよくわかるように配置されている。ファン必見の展覧会だ。

なお、見物後上野公園の中を散策した。噴水広場のあたりが以前とは大分違った印象を与える。噴水池を長方形のシンプルな形にし、池周辺の藤棚やらその下にあったベンチを取っ払い、かなりすっきりとして見える。このあたりに沢山あったホームレスのブルーシートも見えない。公園整備にあわせて追い払ったものと見える。





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