そこで副所長から、日本の監獄行政の考え方のようなものをきいたところ、日本ではイギリスのように私語を許すことはないし、労働も任意ではなく義務だという答えが返ってきた。監獄内の労働は、気晴らしではなく、犯した罪への処罰としてとらえられている。そこがイギリス人たちには鮮烈にうつるようだ。
監獄のこうしたあり方は、日本ではあまり問題になることがないが、国際社会では、囚人と雖も人権は尊重されるという考え方が強くなってきつつあるようだ。だから日本の監獄の秩序正しさは、囚人たちの人権の制約の上に成り立っているという評判が広がるのは、日本の監獄行政にとって都合がいいことではない。あまりにも厳格なルールや、独房の割合が高いことなどは、批判材料にされるおそれがある。
ところで、日本の監獄は現在188あるそうだ。収監者の数は年々増加する傾向にあるといわれるが、それでも日本の収監者の数は、相対的には低い。人口10万人あたりの収監者の数は、アメリカの716人、イギリスの149人に比べて、55人である。またアメリカやイギリスでは、収監者2人につき一人の獄卒を配置しているが、日本の場合には4人につきひとりである。監獄内の厳しいルールが規律の確保をもたらし、そのことで獄卒の配置人数を減らすのを可能にしている、と言いたげな風である。
監獄と言えば、先日公開された「あなたへ」という映画の中で、高倉健さんが獄卒(刑務官)の役を演じていた。映画の中では、囚人たちが木工をする場面も出てきたが、そこには懲役という暗いイメージは感じとれなかった。また監獄と言うものについて考えさせられることも殆どなかった。
(参考)Eastern porridge Even Japanese criminals are orderly and well-behaved Economist
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