ユーロは日本の二の舞になるのか:イタリアの選挙結果

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イタリアの総選挙で、ベルルスコーニの中道保守が大健闘し、新興政党「五つ星」が躍進した。どちらもモンティが主導してきた緊縮路線を批判し、ベルルスコーニに至っては、減税と財政出動の組み合わせを約束している。これを前にして欧米の批評家たちには、無責任な政治家がイタリアを牛耳れば、一人イタリアの破滅のみならず、ユーロの破滅につながると心配する者が多い。「エコノミスト」誌などは、ユーロが日本の二の舞を舞って、第二の日本になるだろうと警告している。

「エコノミスト」などの欧米の経済ジャーナリズムが、イタリアの選挙結果に憂慮を示し、ユーロの先行きを心配するのは彼らの勝手だ。だが、何故そこに日本を引っ張り出してくるのか。まるで日本は疫病神の代名詞のような取り扱われ方だ。

「エコノミスト」がイタリアの選挙結果を憂慮している最大の理由は、財政の規律がゆるみ、また規制緩和などの構造改革が後回しにされるのではないかということらしい。モンティ政権のもとでやっと財政規律が図られるようになり、また構造改革にも一定の道筋がついてきたというのに、それがおじゃんになっては、イタリアはふたたび危機に見舞われるようになり、それがもとでユーロの前途は再び暗雲につつまれると、心配しているらしいのだ。

だがそうだとするなら、日本を引き合いに持ち出すのは筋違いと言うものだ。日本が20年間もの間デフレ不況に苦しんできたのは、基本的には国内の需要の収縮が原因で、財政規律のだらしなさや構造改革の不徹底が原因ではない。日本はむしろ財政出動をすべきときに不徹底な対応に終始したのだし、また構造改革と称して労働分配率の劇的低下をもたらしてきた。こうしたやり方が需要を一層冷え込ませ、デフレを長引かせてきたのだ。

エコノミストなどは、財政の野放図さと労働分配率の不当な高さがイタリアをだめにするだろうといっている。ところが日本は、いったん財政出動に踏み切っても中途半端に切り上げたりする一方、労働分配率を一貫して低下させる政策をとってきたのである。

それゆえ、イタリアの暗い前途を憂えるのに日本の失敗例を持ち出してくるのは全くお門違いと言うものだ。(イラストはEconomist から:ベルルスコーニとグリッロ)

(参考)Send in the clowns How Beppe Grillo and Silvio Berlusconi threaten the future of Italy and the euro Economist





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