人の使い捨てを議論する産業競争力会議

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安倍政権が設置した「産業競争力会議」なるものが、「解雇ルールの明確化」について議論を始めたそうだ。「成長産業への人材の移動が円滑になるよう、企業が社員に再就職の支援金を支払うこととセットで解雇できるようにする」などと意義を歌っているが、要するに従業員の解雇をしやすくするための議論である。

政府による規制の緩和やベンチャー企業の育成など、産業の競争力を高めるための措置には様々なものがあるが、それらをさしおいてまず雇用のあり方に手をつけたところに、この議論の本音が見える。雇用の劣化がひどくなる一方のなかでも、まだまだ正規社員の解雇はそう簡単にはできないようになっているが、その制限を一挙に取り払うことによって、いつでも好きな時に、経営者が従業員を首にすることができるようにしようと言うわけだろう。

最近企業の「追い出し部屋」というのが話題になった。これは不要になった社員を一部屋に集め、さまざまな嫌がらせを加えることで、自発的に退社せざるを得ないようにさせるというものだが、そのやり方があまりにも卑劣で非人間的だとして世論の大きな批判を買った。それは企業が思うように首切りができないことから生じた出来事であって、簡単に社員を首にできれば、そんな非難を浴びずにすんだわけである。

また最近は「ブラック企業」というのも話題になった。これは大量に採用した社員を使いつぶし、彼らの犠牲の上で利益を出している企業をいうが、これらの企業では、使いつぶしでぼろぼろになった社員が、自分の意思でやめていくという。しかし、ここでの議論は、そもそも社員の意思に反して一方的にやめさせる方法、人を使い捨てにする方法がテーマになっている。

この会議のメンバーを見ると、ほとんどは大企業の経営者である。先日話題を振りまいたローソンの社長も入っているが、この会社などはそもそもほとんどが非正社員であって、正規社員はほんのひとにぎりでしかない。そのほんの一握りの正規社員ですら、いつでも好きなときに首にしようというのであるから、悪辣というほかはない。

また竹中平蔵氏などは、小泉時代に構造改革と称して労働条件を極端に悪化させてきた張本人だ。そういう人間が音頭をとって、さらなる雇用の劣化に邁進する。それに対して有効な抑止勢力が殆ど存在しない。これは異常な眺めと言うほかはない。(写真はNHKから)

関連記事:
規制改革会議は何を検討するのか http://blog2.hix05.com/2013/02/post-299.html
若者を使いつぶす「ブラック企業」 http://blog2.hix05.com/2013/01/post-258.html

 





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