西武と投資ファンドの戦い

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西武鉄道などを傘下にもつ西武ホールディングズの大株主たる米国の投資ファンド、サーベラス・キャピタル・マネジメント(Cerberus Capital Management, L.P.)が西武に対して敵対的TOBを仕掛けているそうだ。目的は経営への関与を強め、できれば経営権を握ることも視野に入れているという。

西武鉄道は2004年に有価証券報告書の虚偽記載で上場廃止になった。その翌年、サーベラスは多額の出資を行い、西武の再建を支援する立場にあったが、再建が一段落し、再上場が日程に上ってきた。そこでサーベラスとしては、株価を高めるための方策を実施するよう西武にせまったが、西武側がいうことを聞かないので、TOBに踏み切ったとみられている。

情報筋によれば、サーベラスは西武に対して、秩父鉄道などの不採算路線の廃止や、西武ライオンズの売却などを求めたと言われる。これに対して西武側は、鉄道の公共性や、西武ライオンズのグループにとっての象徴的な役割を理由にして断ったということらしい。

アメリカの投資ファンドが、経営危機に陥った日本企業や、隠れた資産を持っているとされる企業の経営権を握った上で、それらを再建させたり、含み資産を売却させることで株価を吊り上げ、その時点で株を売り抜けることによって、巨額の差益を回収するというのは、いわば定石に類することだ。

だから今回のケースでも、サーベラスは、定石に従って西武の株を高く吊り上げ、なるべく大きな差益を回収しようとしたに過ぎないのだろう。その結果、秩父鉄道が廃止されて地域住民が困ろうが、ライオンズが他の企業の名に変ろうが、そんなことは問題ではない。要はいかにスマートに金を稼ぐかと言うことだ、というわけなのだろう。

こういう風景を見ると、金融資本の論理と言うものが、実体経済の健全性とは全く係わりをもとうとしないことが良くわかる。グローバリズムといわれるものの行き着く先を見せられているわけだ。


 





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