衆議院選挙無効判決の意味

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昨年12月の衆議院選挙をめぐる「一票の格差」訴訟が全国16の裁判所で提起され、今日(3月27日)すべての判決が出そろったが、いずれも「違憲」ないし「違憲状態」を指摘するもので、厳しいものとなった。今回とりわけ注目すべきなのは、選挙を無効とする判決が初めて出たということだ。そのうち、広島高裁では、一定期間経過後(この場合11月26日)に判決の効力が出るとし、同岡山支部では、この判決が確定した時点で無効になるとした。

広島高裁が猶予期間を設けた理由は、ただちに無効とすると、選挙制度を改正すべき国会議員が居なくなってしまうことを考慮したからだ、との解釈が有力だ。したがって今の国会議員には、11月26日までに、選挙制度を改正し(つまり区割りを変え)、一票の格差を是正したうえで、再選挙することが求められていると考えられる。岡山地裁が、判決確定を以て無効としたのは、最高裁での確定判決までには一定の時間がかかり、事実上国会には「格差是正のための猶予期間」があると判断したためだろう。

そこで今の国会議員たちには、近い将来に選挙の区割りを改正し、その上で再選挙することが、法的に義務付けられたのだと考えることが出来る。選挙にかかわる法律自体は、(0増5減というかたちで)先の国会で駆け込み成立しているのだから、それをもとに区割りを変えればいいだけの話で、そんなに時間を駈けなくともできるはずだ。

議員の中には、これを司法による国会への不当な介入だなどといきまくものもいるというが、そういう連中は三権分立について、履き違えた考え方をもっているのだというほかはない。不当な介入だなどと息巻く前に、自ら襟を正すのが筋だ。それをしないで既成事実の上にあぐらをかこうというのは賤しい根性の持ち主がすることだ。そういう連中のいうことは泥棒の屁理屈と異なるところはない。

ところで、もしもの話として、今の国会議員が、11月26日ないし最高裁による確定判決の時点までに、再選挙をするということを行わなかった場合どうなるか。

その場合には、法的には国会議員が存在しないという、とんでもないことになる。これは法治国家としては致命的なことだ。法的に存在しないものが、法的な行為を行っても、それはことごとく無効な行為となる。それでもその行為を押し通そうとすれば、それは事実上のクーデターとしかいえない、そんなすさまじいことになるわけだ。

それ故、今の国会議員たちには、日本のこれからの命運がかかっているということが出来る。とりあえず一票の格差を是正して、その上で再選挙を行う。定数是正や両院の関係など、国会を巡って様々な課題があることはわかるが、それを理由にして一票の格差是正を遅らせることは、もはやできない。

そこで問題となるのは、何を以て一票の格差が是正されたといえるのか。そのことについて、今回の判決は触れていない。先の国会で成立した「0増5減」では生ぬるいと言った趣旨の指摘があったが、それではどこのラインなら生ぬるくないのか、そのことに踏み込んだ指摘はなかったわけだ。それは一次的には国会議員が決めることであり、その場合に、一票の格差を限りなくなくす努力をすることが彼らの良心なのだと、いいたいのであろう。


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