日本国憲法を敵視する人々:日本維新の会の党綱領

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日本維新の会が昨日(3月30日)結党以来初の党大会を開き、党の綱領なるものを採択したそうだが、そこには「日本を孤立と軽蔑の対象に貶め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶である占領憲法を大幅に改正する」と書かれているそうだ。そうだ、というのは、筆者はまだその原文を読んだわけではなく、今のところ新聞報道等で知ったに過ぎないからだ。

その報道等によれば、この一節は維新の会の共同代表である石原慎太郎氏の強い意向で盛り込まれたということだ。石原氏が日頃から現憲法を敵視していることは広く知られているから、今更それを問題にしても始まらないとは思うけれど、問題なのは、いまや日本の政治に一定の存在感を示している維新の会が、それを党の綱領という形で取り入れたことだ。

安倍自民党はいま、憲法改正を最大の政治課題として、着々とその実現に向け地ならしをしているところであり、この夏の参議院選挙で改憲勢力が三分の二に達すれば、一気に憲法改正への動きを強めるだろうと予想されている。そうした中で、維新の会がこのような綱領を定めたことは、現憲法の大幅な改正の露払いのような意義をもっていると考えてよい。

石原氏個人の意向が強く反映されているとはいえ、この綱領の文言はただ事ではない。何処の国でも憲法改正を議論することは当然のこととして認められているが、それは現行の憲法を尊重したうえで、その足りないところを補うための議論が許されるということであって、現行憲法そのものを全面否定するようなことを許している国は、先進国の中にはどこにも見当たらない。それどころか、政治家を含めて政府の公務員には憲法遵守義務を課している国が殆どである。

ところが日本では、長い間政府権力の担い手であり続けた自民党の政治家の多くが現行憲法に敵意を抱き続けてきたという異常な状況があった。いまや右傾化の進んだ自民党では、党の綱領で現行憲法の改正をうたっている状況である。日本維新の会は、その自民党よりもさらに露骨に、現憲法に対する敵対意識を表に出しているわけである。

この綱領の中に出てくる「孤立」、「軽蔑」、「共同幻想」、「占領憲法」といった言葉については、批判すべき点が多々あるが、今は触れないでおく。石原氏のようなこちこちの極右老人政治家を相手に、論争してもはじまらないという気持があるからだ。

それにしても、維新の会といい、自民党といい、現行の日本国憲法を改正してどのような憲法を作ろうというのか。自民党についていえば、すでに憲法改正草案を発表している。それを読んだ限りでは、天皇を元首として位置付けたうえで、天皇には憲法の順守義務を外し、代って国民にその義務を課すというものであり、また、問題の9条については抜本的に改め、日本をアメリカ並みに戦争のできる国にしようとするものだとわかる。

維新の会の石原代表は、現憲法はもとより無効であり、したがって「現憲法を廃する」というのが日頃の持論のようだから、廃止した後では、大日本帝国憲法を復活させるべきだと考えているのかもしれない。実際、東京都議会の維新の会の議員が、日本国憲法を廃止して明治憲法を復活させるべきだとの請願に賛成した経緯があったが、それが当時東京都知事であった石原氏の意向を踏まえていたことは十分に考えられる。

日本ではこうした暴論もまかりとおるが、他の民主主義国家では考えられないことだ。憲法を廃止して昔の憲法に戻させようなどと言う主張は、要するにクーデターの部類に入る。クーデターとは国家に対する反逆罪なのであるから、どの国の憲法でもそれを許されないこととして位置付けている。ところが日本では、その許されないことが公然とまかり通っているわけである。それもまた、現行日本国憲法のいいところかもしれないが。


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