2013年4月アーカイブ

プーチンと安倍総理の温度差

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4月28日に「主権回復の日」を祝った安倍総理が、大規模な経済ミッションをともなってロシアを訪問し、プーチン大統領と未解決の「主権回復」問題について話し合った。その結果出された共同声明と、共同会見での両首脳のコメントが新聞紙上に掲載されていたので、一読した次第だ。

猪瀬東京都知事がニューヨーク滞在中に地元のニューヨーク・タイムズとのインタビューに応じ、そのなかで、東京をアピールして聊か勇み足的な発言をしたという情報が日本のメディアに流れた。朝日新聞によれば、「イスラム諸国は喧嘩ばかり」とあたかもイスタンブールの適格性を疑問視するような発言をする一方、東京の優位性について、「洗練された設備もない二つの国と比べて下さい」と、露骨なお国自慢をしたそうだ。

南方熊楠の神社合祀反対運動

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南方熊楠の生涯の中で神社合祀反対のために費やしたエネルギーは並大抵なものではなかった。彼はこのために、研究のための貴重な時間を割いたのみならず、乏しい生計資金の中から七千円を費やし、また官吏を威圧したかどで投獄されもした。彼をそれまでに駆り立てた理由は、神社合祀によって多くの神社が無くなる結果、その神社に付属していた森林が伐採されつくすことへの危機感だった。森林伐採によって、生態系のバランスがくずれ、植物の生息に悪い影響が出るのみならず、さまざまな問題を生じさせる。熊楠はそれを座視できなかったのである。

日本はまだ主権を回復していない

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昨日(4月28日)、安倍総理直々の肝いりで「主権回復の日」の式典が、天皇、皇后をお招きして行われた。安倍さんはこの記念日を「希望と決意の日」と位置付けたそうだが、彼が何を希望し、何を決意しているのか、いまひとつ明確ではない。おそらく、日本政治の右傾化を希望し、その布石として憲法を改正すべく決意しているというのが、大方の受け止め方だ。というのも、ことさらに主権回復を云々するのは、現行の憲法が被占領時代にアメリカによって押し付けられたものであるから、主権を回復した今こそ、自主的な憲法を作り直そう、そういうメッセージが伝わってくるのである。


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デューラーは1498年に木版画のシリーズを刊行した、「ヨハネの黙示録」というもので、黙示録の中の記述を十四点の木版画に描きだし、それにヨハネの肖像を加えたものだった。これは大当たりをとり、デューラーの名を一躍世間に知らしめたという。

小石川の坂道を歩く

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連休前半の今日(4月28日)、一点の曇りもなく見事に晴れ上がったのを幸いに、久しぶりに東京を描く市民の会のスケッチ大会に参加した。今日は小石川界隈を散策し、気に入った風景を思い思いにスケッチするのだという。集合場所の江戸川台駅近くの小公園に午前10時に到着すると、すでに40名ほどのメンバーが集まって、ウォーミングアップをしている。

エミリー・ディキンソンの詩から「教会で安息日を過ごす人がいるけど(Some keep the Sabbath going to church)(壺齋散人訳)

  教会で安息日を過ごす人がいるけど
  わたしは自分の家で過ごすの
  ボボリンクを聖歌隊代わりに
  果樹園を礼拝堂代わりにして

男の魅力:身長、肩幅、ペニス・サイズ

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男の魅力をなんで評価するか難しいところだが、もっとも手っ取り早いのは、身体的な特徴からはかることだ。これなら、計数的な評価ができる。そんなわけで、男の魅力を構成する代表的な要素として、身長、肩幅、弛緩時のペニスの大きさ、この三つをとりあげ、それぞれがどんな大きさの時にもっとも魅力を感じるか、御婦人たちにアンケート調査をした研究グループがある。オーストラリア国立大学のモーツ教授のグループだ。

春愁:陸游を読む

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陸游の七言律詩「春愁」(壺齋散人注)

  春愁茫茫塞天地  春愁 茫茫として 天地を塞ぎ
  我行未到愁先至  我が行 未だ到らざるに 愁ひ先づ至る
  滿眼如雲忽復生  滿眼 雲の如く 忽ち復た生じ
  尋人似瘧何由避  人を尋ぬること 瘧に似たり 何に由ってか避けん
  客來勧我飛觥籌  客來りて 我に勧む 觥籌を飛ばせと
  我笑謂客君罷休  我笑って 客に謂ふ 君罷めよ休めよ
  醉自醉倒愁自愁  醉へば自づから醉倒するも 愁ひは自づから愁ふ
  愁與酒如風馬牛  愁ひと酒とは 風馬牛の如しと

強まるEUへの不信

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上のグラフ(Eurobarometer をもとにGuardianが作成)は、EU加盟六か国における、EUへの不信の割合を示したものだ。2007年と2012年のデータが示されているが、すべての国でこの5年間に不信の割合が上昇していることが読み取れる。それも単なる上昇ではない、大部分の国では、不信が信頼を大きく上回り、全体の半数以上を占めている。このことは、いまやEUそのものが、存続の危機を感じさせるほどに、各国の民衆から見放されているということを意味する。

芝大門:水彩で描く東京風景

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芝大門の愛称で知られるこの門は、増上寺の総門にあたるものである。現在のは昭和12年に建てられたもので、コンクリート造りであるが、外観を工夫しているせいで、木製のものと変らぬ風格を醸し出している。

カー・テクノロジーがどんどん進化して、部分的なオート・ドライブが実現しているが、全面的なオート・ドライブ、つまり人間の手を必要としない、ヒューマンレス・ドライブが、遠からず実現しそうだという。それが実現すれば、自動車は自分の判断で運転し、人間はそれに乗っているだけで、目的地に運んでもらえる。そうなれば、目の見えない人を始めとした障害者にとって移動することが各段に楽になり、老人や子供でさえも、単身自動車で移動できるようになる。こんな夢のような話が、今後5年以内に実現する可能性が高いというのだ。

瘋癲老人日記:谷崎潤一郎を読む

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「瘋癲老人日記」は昭和36年11月から翌年の5月にかけて雑誌に連載されたというから、それを書いていた、というより口述していた谷崎は、小説の主人公と同じく77歳だったわけだ。その当時の谷崎は主人公の老人同様に手がマヒして筆をとることがままならなかったので、口述筆記の形で創作を行っていたのである。その創作ぶりというのは、作中の老人が女性の足の裏の拓本をとるのに夢中になったのと、ある意味同じような意味合いの行為だったのかもしれない。谷崎は沸き出づる想念を形にすることに、老いの生きがいを感じたのではあるまいか。

日本は人口崩壊に向かうのか?

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一昨年、昨年と二年連続して日本の人口が減少し、日本はいよいよ人口減少社会に入ったと、いろんなメディアが論評していたが、そのなかで特に気になったのが、毎日新聞の4月20日付「余禄」の記事だ。この記事は「人口崩壊」と云う言葉を使って、今後の日本の人口減少の異様さについて言及している。

一人息子:小津安二郎の世界

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山田洋次監督の「東京家族」に刺激されて「東京物語」を見たのがきっかけとなり、ここでひとつ、小津安二郎の映画を一とおり見てみたいという気持になった。その手始めに見たのが「一人息子」である。昭和11年の作品だ。小津が作ったトーキー映画の最初の傑作と言うことになっている。これをDVDで見たのだが、なにせ古い作品だということもあって保存状態がよくない。とりわけ音声が大分乱れている。それでも不便を忍んで見ただけの価値はあった。

インドの幼女レイプ事件

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昨年12月に起きた女子学生への集団レイプ事件以来、インドではレイプの犯罪者と彼らに鷹揚な当局に対する怒りが爆発し、首都ニューデリーでは、毎週のようにデモが起きた。最近は、そのデモが少しずつ下火になってきたようだったが、ここへきてまた爆発的な盛り上がりを見せているようだ。きっかけは、先日起きた、5歳の幼女に対するレイプ事件だ。

鶴見和子女史の労作「南方熊楠」は、南方熊楠を包括的に取り上げて論じた最初の単行本だと女史自身が述べている。柳田国男と並んで日本民俗学の創始者と目されている南方であるが、柳田についての研究が百花繚乱なのに比較すると、南方についての研究はあまり進んでいなかったということを、女史は示唆しているわけである。女史自身もまず柳田の研究から始め、その延長上に南方にたどり着いたが、たどり着いてみるとすっかりその魅力に取りつかれてしまった、ということらしい。

日本の解雇規制は厳しいのか?

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最近、政府が設置した産業競争力会議などを舞台に、解雇規制の緩和が議論されるようになったが、その際によくいわれるのが、日本の解雇規制は非常に厳しく、それが労働力の移動を妨げているといった理屈だ。竹中平蔵氏などは、「日本の正社員というのは世界の中で非常に恵まれたというか、強く強く保護されていて容易に解雇ができず、結果的にそうなると企業は正社員をたくさん抱えるということが非常に大きな財務リスクを背負ってしまうので、常勤ではない非正規タイプの雇用を増やしてしまった」と、まるで正社員の解雇規制の厳しさが、非正規社員の増加の原因であるかのような言い方をしている。

四人の魔女:デューラーの銅版画

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「四人の魔女」と題するこの銅版画が、イタリアで好んで描かれた「三美神」のパロディであることは明確だ。デューラーは伝統的な三美神のポーズをもとにして、それに四人目の美神を加えたのだったが、それを四美神とするかわりに、四人の魔女とした。そこにイタリア・ルネサンスの画家とは異なる、北方の画家としてのデューラーの面目がある。

生命生存に適した惑星:Kepler-62-e

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ケプラー望遠鏡を使って系外惑星の研究を進めているNASAのグループが、このたび生命存在にとって最も適した環境の惑星を発見したと発表した。それは地球から1200光年の距離にある赤色矮性を親星とする双子の惑星で、いづれも温度や大きさなどが、生命存在にとって非常に有利な条件を備えているという。研究グループはこの双子の惑星をKepler-62-e及びKepler-62-fと名づけた。

エミリー・ディキンソンの詩から「詩人たちが歌う秋のほかに(Besides the autumn poets sing)」(壺齋散人訳)

  詩人たちが歌う秋のほかに
  いくらか散文的な日々がある
  雪のすこしこちら側に
  薄靄のちょっぴりあちら側に

近代日本の右翼思想

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日本の政治が急に右傾化したというので、右翼思想と云うものに関心が集まっているそうだ。右翼思想と云うと、北一輝や井上日召などがまず浮かび上がってくるが、その彼らがいったいどのような主張をし、それを今日の右翼勢力がどのように受け継いでいるのか、誰しも興味ある処だろう。そんな興味に応えようとした本がある。片山杜秀著「近代日本の右翼思想」だ。

東郊飲村酒大酔後作:陸游を飲む

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淳熙三年(1176)職を免じられた陸游は、成都の郊外に家を借りて寓居し、引退生活に入った。そんな陸游のために范成大はなにかと心配してくれて、祠録を領するように取り計らい、生活の基盤をととのえてやった。ここで陸游は約二年間悠々自適の生活を送ることになる。
アメリカの経済学者者カーメン・ラインハート(Carmen Reinhart)とケネス・ロゴフ(Kenneth Rogoff)が2010年に発表したいわゆる90パーセント理論は、ユーロ圏の経済官僚やアメリカ共和党の武器として重用されてきた。その理論と云うのは、政府の借金がGDPの90パーセントを超えると、その国の経済成長が鈍化するというものだ。それ故、経済成長を長期的に続けていくためには、財政規律を徹底しなければならない、という主張の有力な根拠とされたわけだ。

水天宮:水彩で描く東京風景

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水天宮は安産の神として広く知られている。出産を控えた女性が腹帯を求めに来たり、無事赤ん坊を授かった夫婦が、その子を連れて返礼のお宮参りに訪れる姿が絶えない。

ナヴァーリヌイ裁判始まる

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プーチン批判で知られるブロガー、アレクセイ・ナヴァーリヌイ氏の裁判が開始されたが、開廷の直後閉廷が宣言されたという。4月下旬に再開されるのだそうだが、なぜこんな訳のわからぬことをするのか、疑問なところだ。しかし、この裁判が一種のショーだと割り切れば、そんなに訳がわからぬでもない。

シェリングの思想

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シェリングはヘーゲルより五歳若かったが、ヘーゲルよりも早く有名になったし、ヘーゲルに影響を与えもした。それ故、カントからヘーゲルへと至るドイツ観念論の流れの中では、フィヒテとともに、カントとヘーゲルをつなぐ中間項としての位置づけを与えられてきた。

エロスの遊戯:谷崎潤一郎「鍵」

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谷崎のこの小説は「鍵」についてのくだくだしい言い訳から始まる。そのいいわけとは、56歳の大学教授が書いている日記のなかでなされる。その日記の中でこの老教授は、妻への色々な注文(それは主に45歳になる妻とのセックスに関することであるが)を書くのだが、それを是非妻に読んでほしいと思う。しかし自分から読むように勧めるのは気恥ずかしいので、妻が偶然この日記の存在に気づき、ひっそりと隠れて読むように仕向けたい。そのためには、とりあえずこの日記を鍵のかかるところに保存して、おいそれとは手にすることが出来ないようにしたうえで、その鍵が妻の手に、さも偶然に入るようにしなければならない、というような事情が、老教授が書き始めた日記の最初のページで、くだくだしく説明されるわけなのである。

冥界への入り口、ヒエロポリス

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ギリシャ・ローマ神話に出てくる冥界への入りについて、このたびイタリアの研究グループが詳細に調査したそうだ。その入り口なるものがあるところは、小アジアの都市ヒエロポリス(現在はトルコのパムッカレ)の丘にあるハーデス神殿の一角、そこに大きく口をあけた穴が、冥界への入り口なのだそうだ。

南方猥談:南方熊楠の履歴書

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南方熊楠の履歴書を読むと、ところどころ話が脱線して、猥談に及ぶことが多い。それが少しもわざとらしくなく、話の筋道の上でも自然に受け取れるのであるが、ただ単にわざとらしくないにとどまらず、非常に裨益されるところが多い。要するに面白いのである。

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イタリア旅行から戻ったデューラーが、本格的に取り組んだのは版画であった。デューラーは、銅版画については若い頃に習い覚えた金細工の技術を生かして、精密な作品を作り上げた。また、木版画は当時、成立して間もない若い芸術であったが、デューラーはそれを本格的な表現形式に高めていった。

エミリー・ディキンソンの詩から「夏 鳥たちに遅れて(Farther in summer than the birds)」(壺齋散人訳)

  夏 鳥たちに遅れて
  草むらで悲しそうに
  小さな者たちの一団が
  控えめなミサを執り行う

和范待制秋興其一:陸游を読む

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陸游と范成大はかつて編類聖政所において同僚として勤務していた間柄であった。五年前の乾道六年《1170》には、夔州に赴任する陸游と、金への使いに赴く范成大とが、鎮江の近くの金山寺で会っている。その後、范成大のほうは順調に出世して、いまや四川省をはじめとする西部方面の軍の最高司令官になった一方、陸游はその部下として仕える身になったわけである。

銀座米井ビル:水彩で描く東京風景

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銀座2丁目の東側に、絵にあるような建物がたっている。通称銀座米井ビル、米井商店の本社ビルとして昭和5年(1930)に建てられた。ロマネスク様式を思わせる入り口のアーチが特徴だ。

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オバマが議会に提出した来年度予算案について、ポール・クルーグマンが例によってかみついている。この予算案と言うのは、富裕層への増税による財源で財政赤字の縮小を図る一方、社会保障や医療関連予算をカットしていることに特徴がある。事情通たちはそこを捉えて、これは、オバマからGOP(共和党)へ差し伸べられた妥協のシグナルと言っているが、とんでもない。そんな妥協はとても期待できない。というのも、オバマは、こちらから妥協を持ちかければ、GOPの方でも大人の対応をするだろうと考えているようだが、今のGOPには大人の対応は期待できない。彼らは皆が皆そろって餓鬼の集まりだからだ、というのである。

フィヒテの思想

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フィヒテは自分の思想をWissenschaft と名づけた。日本語では大方「知識学」と訳されているが、普通には英語の Science に対応するものとして「科学」という意味合いに近い言葉だ。フィヒテが自分の思想を、哲学 Philosophy ではなく、Wissenschaft と言ったのは、それが単なる思弁ではなく、生活を律する力を持っていることを強調したかったからだろう。彼は自分の思想を、生活を律するための「知の体系」、つまり「生きるうえでの知恵」と自負していたのである。

オランドは早くも落ち目か?

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フランスのオランド大統領への国民の支持が急速に下がっているという。閣僚のスキャンダルなどが影響しているといわれるが、基本的な原因は、彼が選挙公約に掲げた緊縮財政の見直しと雇用拡大が思うような効果をあげていないことだ。事態は財政状況が一層悪化する中で、失業率が増大するなど、逆の方向に動いている。なにしろ財政赤字はユーロの共通基準である対GDP比3パーセントを上回り、失業率は11パーセントと言った具合だ。

「少将滋幹の母」は、谷崎潤一郎の古典趣味の傑作であり、なおかつ一連の母恋ものの到達点というべき作品である。古典趣味も母恋の感情も、谷崎文学のうちにあっては、マゾヒズム趣味とは異なったところで、強い重力を発していたのであるが、その方面が最大限発揮され、凝集されて怪しい光を放つに至ったのが、この作品なのである。

マーガレット・サッチャー死す

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マーガレット・サッチャーほど評価の別れる政治家はいないだろう。イギリスにおいてさえ、彼女への評価は一筋縄ではいかない。保守的なサークルでは、イギリスを「老人病」から救い出し、若々しく再生させたとする評価がある一方、階層間の対立を一層深刻化させ、イギリスを不寛容な社会にしたという批判もある。しかしどちらの方も、彼女がイギリスに限らず世界の政治史上に巨大な存在感を主張していることは認めている。その所以は、彼女が保守主義を再生させということにある。実際、彼女が活躍した1980年代と言うのは、アメリカではレーガン、日本では中曽根の時代であり、それらの国で一斉に沸き起こった保守主義の旋風は、サッチャリズムと言われる独特の哲学と同じ地盤に立っていたものである。

南方熊楠の履歴書

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南方熊楠は履歴書というものを残している。これは、体裁上は58歳の時に書いた手紙なのであるが、その中で自分の半生を詳しく振り返っている。これがあるがために、南方熊楠の研究者は、南方の生涯のあらましについて知ることができる。筆者は先日鶴見和子女史の「南方熊楠研究」を読んだばかりだが、その本の中の南方の伝記の部分も、この履歴書を最大の頼りにしている気配が伺われた。

アメリカの保守とリベラル

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西欧諸国の今日における政治状況をごく大まかに定義づけるとすれば、保守主義対社民主義の対立ということになろう。この場合、社民主義には各国を通じて理念の共通性を指摘することが出来るが、保守主義と言うのは、各国それぞれに多様でありうる。というのも保守主義と言うのは、伝統的な価値観を尊重するということを最大の特徴としており、その伝統的な価値観と言うものが、国によってそれぞれ異なるからである。したがって、社民主義者は国境を超えて団結することができるが、保守主義者はかならずしもそういうわけにはいかない。

蟹:デューラーの水彩動物画

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第一次ヴィネチア旅行中のデューラーの画業として残っているのは、水彩画と素描が殆どだが、なかでも水彩画に優れたものがある。旅の途中に描いた風景画や、ヴェネチアで見かけたカニやエビなど海の生き物のスケッチが印象的である。

宝塚歌劇団の台北公演

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宝塚歌劇団の台北公演(於国立劇場)が好調だそうだ。初日の6日に満席となったのを始め、15日間にわたるすべての公演について、入場券(合計24000席)を既に完売したという。

エミリー・ディキンソンの詩から「小鳥が道に下りてくると(A bird came down the walk)」(壺齋散人訳)

  小鳥が道に下りてくると
  私が見ているのを知らずに
  ミミズをふたつに引きちぎって
  生のままたべてしまった

暗黒物質(Dark Matter)の存在は、1933年にスイスの天体物理学者フリッツ・ツヴィッキー(Fritz Zwicky)によって予言され、その後70年代には銀河の回転速度を観測する中でその存在が確信されるようになったが、まだその実物が観測されるには至っていない。先般話題になったヒッグズ粒子の場合、1964年に予言されて以来48年後には観測されていることに比べると、気の遠くなるような話である。

樓上醉歌:陸游を読む

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淳熙元年(1174)の暮、栄州知事代理の職にあった陸游は、成都府路安撫使司参議官への就任を打診された。打診したのは旧来の友人范成大であった。范成大はこの年広南西路計略安撫使(今の広西省方面の軍司令官)として桂林に赴任していたが、淳熙2年中に成都府路安撫使(四川省等西部方面の軍司令官)に転ずることになっていた。そこで赴任に先立って、自分の幕府の参謀として、その地にいた旧知の陸游に声をかけたのだと言われている。陸游はその打診を喜んで受け入れた。というのも、軍事面で巨大な影響を行使することとなる友人の幕府に加われば、陸游の宿念たる金への反攻に、一歩でも近づくことが出来るかもしれないからだ。

交詢社ビル:水彩で描く東京風景

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交詢社は、実業家の社交クラブとして、福沢諭吉が設立したものである。時に明治13年(1880)、日本における社交クラブの草分けともいうべきものだ。

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大リーグ、レンジャーズ所属のダルビッシュ有が、4月3日の対アストローズ戦で好投し、26人をノーヒットで抑え、あと一人でパーフェクトゲームというところまでいった。大リーグの長い歴史の上でも、パーフェクトゲームを達成したピッチャーはたった23人しかいない。その途方もない記録をあと一人で達成と言うところまでいったわけだから、当日の球場は異常な雰囲気に包まれたそうだ。結果的には達成できなかったが、その余韻は球場外まで溢れだし、スポーツ関係のメディアはもとより、一般のブログなどでも話題になったようだ。

カントの政治思想

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カントの政治思想は、人格の絶対性を内実とした道徳哲学の応用であるとともに、近代自然法の影響も強く受けている。また、アメリカの独立戦争やフランス革命からも大きな刺激を受けたと思えるが、フランス革命についてのカントの反応には複雑なものが伺える。カントは一方ではフランス革命の掲げた自由と平等の理念を高く評価しながらも、人民を主権者とする民主主義的な政治体制には拒絶反応に近いものを示したのである。

歌舞伎座こけら落し公演で勧進帳

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歌舞伎座こけら落し公演の様子を昨日(4月2日)のNHKニュース番組が紹介していたが、その中でとりの番組の最後の部分が実況中継されていた。出し物はご存じ勧進帳、松本幸四郎演じる弁慶の「飛び六方」が画面に映し出されていた。

細雪:谷崎潤一郎の世界

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細雪を読んでの最初の印象は、それ以前の谷崎の作品と大分トーンが違うなということだった。谷崎のもっとも谷崎らしさの所以であるところの、あの悪魔的な雰囲気がこの小説には感じられない。もとより大作家の力を入れた作品であるから、結構から文体に至るまで良く書けてはいるが、なにかしら物足りなさを感じる。これが谷崎文学の粋といえるだろうか、という消極的な感想を抱いたわけである。

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習近平夫人彭麗媛(Peng Liyuan)女史の存在感が増している。先日は、夫の初めての外遊に付き添って、行く先々で、中国のファースト・レディとしての存在感を示し、また国内でも、愛国的でかつ聡明な女性であるとの評判をものにしているようだ。

次は玉子焼きの番か? 国民栄誉賞

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長嶋茂雄氏と松井秀喜氏が二人そろって国民栄誉賞に選ばれたそうだ。記者会見でそのわけを聞かれた菅官房長官は、先日大鵬関が選ばれたことが弾みになって、長嶋氏の名前があがった、というような意味のことを言ったらしい。つまり、かつて「巨人、大鵬、卵焼き」といわれて、日本国人に広く愛されたことを記念して、今回その巨人のシンボルともいえる長嶋氏に賞を上げる気に、安倍政権はなったというわけだろう。

サイデンステッカーの丸山真男批判

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丸山真男著「後衛の位置から」には、アメリカの学者たちが「現代政治の思想と行動」英訳版に寄せた批評がいくつか紹介されている。その多くは好意的なものだが、ひとつ辛辣なのがある。エドワード・サイデンステッカーによるものだ。この人は、川端康成の「雪国」などを英訳した人として知られ、日本に大きな関心を抱き続けた人だったが、その人が丸山真男に罵倒に近いような批判の言葉を浴びせているのである。

船橋長津川公園の桜

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久しぶりに気持ちよく晴れ渡ったので、近所にある長津川公園というところに桜を見に出かけた。今年はソメイヨシノの開花が早く、東京地方では3月20日前後に咲き始めたと聞いていたので、もはや散っているかと思っていたが、ご覧のとおり、いまだ爛漫たる咲きぶりで、筆者を迎えてくれた。実は一昨日まで、ちょっとした病気の治療のために三日ほど都内の病院に入院していたので、その間に散ってしまったのではないかと心配していたのだったが、その心配が外れて妖艶な様子を見ることが出来、聊かラッキーな気分になった次第だった。

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右上に"venedier klawsen(ヴェネチアの砦)"と記されているが、場所は北イタリア、ガルダ湖の北のアルコ。デューラーは、1495年の春にヴェネチアからニュルンベルグに向かう途中、この山の麓から見上げるようにしてこの絵を描いたのだと思われる。

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