陸游の五言絶句「楚城」(壺齋散人注)
江上荒城猿鳥悲 江上の荒城 猿鳥悲し
隔江便是屈原祠 江を隔つれば 便ち是れ屈原の祠
一千五百年間事 一千五百年間の事
只有灘聲似舊時 只だ灘聲の舊時に似たる有り
長江のほとりの荒城に猿や鳥が悲しく鳴いている、長江の向う側には屈原の祠がある、一千五百年が過ぎ去り、ただ瀬の音だけが昔と変わらない
前出の「登賞心亭」と同じく、淳熙5年(1178、54歳)、蜀から臨安に向かう途中の作。長江を下る船が、楚の帰州にさしかかった時のものだ。
帰州の郊外には屈原の祠があり、長江を隔てたその向かい側には楚の王城の遺跡があった。
なお、中国人にとって猿の鳴き声は哀切きわまりないものとして聞こえたらしく、様々なところで、哀切を象徴するものとして引用されている。徳川時代の日本の儒者たちもそれを受け継いで、甲州街道八王子の山越えに聞こえて来る猿声を哀切の念をもって聞いた。
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