長期金利の上昇をどう見るか

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このところ株価の乱高下が注目を集めているが、長期金利の上昇傾向も見逃せない。むしろこちらの方が、実体経済に及ぼす影響は大きい。それもマイナスの影響だ。長期金利の上昇は債権の価格の低落を意味するが、それは国債を多く買い込んでいる金融機関の損失につながるし、国の財政負担の増大にもつながる。長期利回りが上がりすぎると、その利払いのために莫大な費用がかかるようになり、国家財政が火の車になって、日本もギリシャ化しないともかぎらないのだ。民間の設備投資意欲も低くなるし、個人の住宅購入意欲にも水を差す。悪いことずくめだ。

アベノミクスが始まってまだいくらもたたないのに、何故長期金利がこんなに上昇したのか。昨日(5月23日)は株価の下落と並行して、債券価格も下落し、長期金利は1年2か月ぶりに1パーセント台になった。一時0.3パーセント台まで下がったことからすれば、短期間で急上昇したといってよい。たかが1パーセントといって馬鹿にはできない。このまま上昇傾向が続くと、とんでもないことになる。

株価の上昇と長期金利の上昇が連動するのはまだ受け入れられやすいといわれる。しかし、株価の下落と長期金利の上昇が連動するのは不気味な事態だ。前者の方には、インフレ期待の進行とか、債券から株への資金の移動とか、あまり害のない理由がつけられるが、後者は、そんな理屈がなりたたない。つまり、株価の上昇は単なるバブルの結果だったのに対して、債権価格の下落=長期金利の上昇は、国債に対する信認の低下を意味する可能性があるからだ。もしそれが本当なら、国債価格は今後も一本調子で下落し、その結果日本はギリシャ化する可能性が非常に高くなる。

そんなことには無論なって欲しくはない。しかし、政府や日銀が政策を改めず、このまま野放図な金融緩和を進めていくと、円安が追い風になるよりも、円への信認低下につながる可能性のほうが強く、それがますます長期金利を上昇させることにつながり、日本が安楽死する可能性が現実のものになる。なんてことになりかねない。


 





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