ペテンのレトリック:安倍政権の成長戦略

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安倍首相が成長戦略の目玉として「一人あたり国民総所得(GNI)を、10年後に150万円増やす」と約束したが、これがあの池田内閣の国民所得倍増計画を思い出させるというので、国民の間には、自分たちの所得がそれだけ増えるのではないかと早合点する向きもあったようだ。無理もない、池田内閣の約束は、実際に国民一人一人の所得倍増につながったわけだから、安倍さんに同じようなことを期待するのは人情というものだ。

ところがよくよく調べてみると、このGNIというのは、家計所得を現す概念ではない。これは経済統計の一種で、「日本国民や企業が一年間に国内外で作りだした付加価値の総額」をさすものだ。一人あたりGNIというのは、GNIを単純に国民の数で割ったもので、そのなかには家計所得の外に企業の所得も含まれている。だから、それが一人当たり換算で150万円分増えたからと言って、実際に家計がそれだけ増えることにはつながらない。企業が儲けた分を、賃金に分配せず、溜めこむだけということもあるし、もうけた分を海外に投資して、国内には還元しないということもあるからだ。

安倍首相が、こんな指標を持ち出して、あたかも個々の家計の所得が150万円ずつ増えると思わせようとするのであれば、それは「ぺてん」だというほかはない。首相がこんなレトリックを使うようでは、国民はますます政治が信用できなくなろうというものだ。


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