解雇しやすい限定正社員:欧米で一般的というのは大ウソ

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いま安倍政権の規制改革会議で議論されている限定正社員制度の問題点については、筆者も先稿で言及したところだ。(規制改革会議に場を移した労働破壊論議 http://blog2.hix05.com/2013/05/post-475.html


その際、規制改革会議の面々が、この制度の対象者を従来の正規社員より解雇しやすくしようとする意図を隠さないことを批判した。彼らは、限定正社員は、ジョブに対応して採用するのであるから、ジョブがなくなれば解雇するのは当然だといい、それは欧米でも当然のこととして行われているような言い方をしているのだが、アメリカはともかく、ヨーロッパ諸国においては、ジョブが無くなったから簡単に解雇できるかといえば、そうではない。解雇するには相当の理由がなければならない、と指摘した。

ということは、アメリカはヨーロッパより簡単に解雇できるという思い込みが、筆者にあって、そういったのだが、そのアメリカでも、ジョブが無くなったからといって、簡単に解雇できるようにはなっていない、という指摘に接した。指摘しているのは、冷泉彰彦氏である。(「限定正社員」構想の議論、欧米では一般的だというのは大ウソ:ニューズウィーク電子版)

冷泉氏によれば、アメリカの雇用は、残業手当のつく一般職と残業手当のつかない管理職・専門職にわかれていて、どちらもジョブに対応して採用されるが、ジョブが無くなった場合に、解雇されやすいのは管理職・専門職の方で、一般職の方は、雇用契約や組合によって守られており、おいそれとは解雇できないようになっている。事業所の閉鎖などの理由がある場合には、一般職の解雇も日本の正社員よりはしやすいと思われるが、それでも簡単に首を切られるということはない。

だから、規制会議の面々が、限定社員に対応する欧米の従業員について、その解雇が簡単であると主張するのは大ウソだ、と冷泉氏はいうのである。

ということは、欧米の制度を前例にとって、日本に限定社員なるものを導入し、その解雇をしやすくしようというのは、日本の経営者たちのかなり身勝手な願望だということが、改めて露呈しているわけである。


関連サイト:日本の政治 





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