陸游の七言律詩「九月三日、舟を湖中に泛ぶるの作」(壺齋散人注)
兒童隨笑放翁狂 兒童隨って笑ふ 放翁狂すと
又向湖邊上野航 又湖邊に向って 野航に上る
魚市人家滿斜日 魚市の人家 斜日滿ち
菊花天氣近新霜 菊花 天氣 新霜近し
重重紅樹秋山晚 重重たる紅樹 秋山晚れ
獵獵青帘社酒香 獵獵たる青帘 社酒香し
鄰曲莫辭同一醉 鄰曲 辭する莫かれ 同(とも)に一醉するを
十年客裡過重陽 十年 客裡 重陽を過ごす
子どもたちが追いかけてきて爺さんがおかしくなったとはやす、それでも湖辺に向かって渡し船に乗る、魚市場の家々に夕日が差し、菊の花開く季節にやがて霜が降りるだろう(野航:渡し船)
色づいた木々が連なり、秋の山が暮れ行き、青い旗が風にはためき祭りの酒の匂いが芳しい、隣近所の皆さん一緒に飲もうではありませんか、自分はもう10年も旅先で重陽の節句を迎えてきたのです(重重:重なりあうさま、獵獵;旗が風にはためくさま、青帘:青い旗、一説に飲み屋の旗:鄰曲:隣近所のこと、客裡:旅先)
小園とおなじく淳熙8年(1181、57歳)、故郷紹興での作。9月9日の重陽の節句を前に、船に乗って遊興し、隣人たちに向かって一緒に酒を飲もうと呼びかける。ここにいう湖とは、紹興の鑑湖をさすのだろう。
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