日本のイスラエル化?

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寺島実郎氏が「世界」7月号に寄稿した小論「アベノミクスの本質と日本のイスラエル化」を興味深く読んだ。この小論の中で氏は、安倍政権の右翼的な本質が東アジアでの日本の孤立の原因となり、それが及ばす政治的な影響を、ほかならぬ同盟国のアメリカが心配している、と指摘している。

アラブに取り囲まれたイスラエルの右派ナタニヤフ政権が孤立を深め、万一イランの核施設攻撃に踏み込んだならば、アメリカはイスラム諸国との間での望まない戦争に巻き込まれると深刻に心配している人が増えている一方で、日本についても、アジアでの孤立を深める結果、アメリカにとって望みもしない米中戦争に引き込まれるのではないか、と本気で心配する人が増えているというのだ。日本がイスラエルと同様、アメリカにとってのお荷物になるという意味で、氏はこれを「日本のイスラエル化」と呼んだわけだ。

たしかに、安倍政権の右翼的言動と、それがもたらすアジアでの孤立化は誰の目にも明らかなことだ。それなのに安倍政権は、いざとなったらアメリカが守ってくれると思い込んでいるようだが、そのアメリカは、日本が望むような米中対立ではなく、米中共存を目指していることは、このたびのオバマー習近平会談でも強調されたとおりだ。

その中国とは、韓国の接近ぶりがきわだってきた。日本は、韓国は価値観を共有できる相手だから、いっしょになって中国をけん制したいというのが、安倍政権にとっても本音だと思うが、当の韓国は、安倍政権の歴史認識を問題視して、日本と距離を置こうとしている。

こんな中で、安倍政権は中国封じ込めと受け取れるような政策を取り続け、アジアでの緊張を一層高める働きをしている。そんな日本を、アメリカは中国より厄介なパートナーと見ているというわけだ。

氏によれば、今のアメリカには、日本の事情を率直に紹介できるような、知日家が非常に少ないのだそうだ。アメリカには日米同盟を飯の種にしている安保マフィアというものがあるが、その政治的影響力は非常に狭まってきている。最近の尖閣を巡る対立を前に、殆ど沈黙状態だという。かわって、知日家とは言えない上院外交委員会のキーパーソンなどが、「尖閣問題で、米国が日本の立場を支持する姿勢を明確にしなければ日米同盟は空洞化する」といって、日本の重要性をアピールしたりもしているそうだが、それはあくまで、日本側がリーズナブルな態度を取っている限りのことだろう。右傾化の余り、中国を挑発するようなことをすれば、アメリカ国内の対日世論が急速に悪化するだろうことは、十分に予測できる。

というわけで、安倍政権の危ない姿勢について、改めて考えさせてくれた。


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