大天使ミカエルと竜の戦い:デューラー「ヨハネの黙示録」

| コメント(0)

durer228.apocal11.jpg

ヨハネの黙示録第12章は、「女と竜」と題して、太陽を身にまとった一人の女が出産し、生まれてきた子供を龍が食べようとする話である。その話の途中に、大天使ミカエルとその天使たちが、竜とその眷属を相手に戦う場面がある。テクストは次のとおりである。

「さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、勝てなかった。そして、もはや天には彼らの居場所がなくなった。この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた」(日本聖書協会訳)

この竜は、このテクストの直前の部分で、火のように赤い竜で、七つの頭と10本の角があり、頭には七つの冠を被っていると書かれているが、デューラーはこの絵の中では、竜をもっと単純化して描いている。そのかわりに、大天使ミカエルのほうを、目立つように描いたわけである。

テクストでは、ミカエルと竜との戦いぶりは、詳しくは描かれていないが、デューラーはケルン聖書の挿絵などをもとに、その戦闘場面を再現している。ミカエルは長い槍を持ち、その刃の先で竜の首を突き刺している。また天使の一人は、別の竜の頭に向けて矢を放とうとしている。

下の方には田園風景が描かれていくが、そこは竜たちが傷ついて落ちていくところである。地上に落された竜たちはなお性懲りもなく、女の後を空しくおうこととなるだろう。

(1497-1498年、木版画、39×28cm、カールスルーエ国立美術館)


関連サイト:デューラーの芸術 





コメントする

アーカイブ