腹はへっても相撲はとれる:イスラム力士・大砂嵐

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今場所(2,013年夏場所)の最大の見どころは、いうまでもなく稀勢の里の相撲ぶりである。何年ぶりに日本人の横綱が誕生するか。その期待を背負った男が、果して期待通りの成績を上げて、横綱を手にすることができるか。日本人なら誰でも気になるというものだ。

今場所には、稀勢の里の外にもうひとり、相撲ファンを喜ばせている力士がいる。エジプト出身の力士、大砂嵐だ。

大相撲は今や、国際的なスポーツとなって、世界中から横綱をめざす男たちがやってきて、しのぎをけずるようになったが、エジプトを始めイスラム圏の国からやってきた若者は、大砂嵐が初めてだという。

その大砂嵐が、今場所十両に昇進し、活躍を期待されるようになった。大砂嵐はイスラム教徒である。イスラム教徒に様々な戒律があるらしいことは勉強不足の筆者にもなんとなくわかっていたところだ。その戒律の中でも、力士としてもっとも問題になりそうなのは、断食だ。断食とは文字通り食を断つことだ。食を断つとは、文字通り飯を食わないということで、したがって腹を減らすということだ。腹を減らすとはどういうことか。

腹がへっては、戦はできない、というのが、古来日本人が言い伝えてきたことだ。相撲も戦の一つである。だから、力士というものは、満ち足りた腹で初めて、相手を圧倒できるものである。

ところが、大砂嵐は、イスラム教徒であることから、断食をしなければならない。それのみならず、断食の果てに、空っぽになった腹を抱えて相撲をせねばならぬ。そんな腹では、踏ん張ることもままなるまい。

今日(7月10日)は、大砂嵐にとって、イスラム教徒にとって大事な断食の節目に当たっている日だったそうだ。それ故彼は、未明に飯を食った後、何も食わずに空腹のまま、本場所の取り組みに臨むことになったそうだ。

腹がへっているわけだから、さぞ力も出ないだろう、と、普通の日本人なら思うところだ。だから、大砂嵐が負けることには十分の理由がある。

なのに、今日、大砂嵐は勝った。たいした男だと筆者は思った。




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