集団的自衛権の行使は現憲法でも可能か:安倍自民党が新たな憲法解釈に動く

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自民党の石破幹事長がNHK番組の中で、集団的自衛権について「現行憲法で行使が否定されていると考えておらず行使は論理的に可能だ」と述べたそうだ。安倍首相の意向を踏まえての発言と思われる。というのも安倍首相はかねてから、集団的自衛権の行使について前向きであり、憲法を改正してでも行使できるようにすべきだと、明言してきたからだ。

石破幹事長は現憲法のもとでも集団的自衛権の行使は可能だというが、そうではないというのが、これまでの憲法解釈の歴史の物語るところだ。集団的自衛権の行使が国会で論議されるたびに、内閣法制局は、「現憲法は、日本の領土が直接攻撃された場合はともかく、外国が攻撃された場合に、その国を守る名目での集団的自衛権の行使は認めていない」と答えてきた。また、安倍晋三氏が尊敬するという、あの岸信介元日本国総理大臣も、国会答弁の中でつぎのように言っている。

「実は集団的自衛権という観念につきましては、学者の間にいろいろと議論がありまして、広狭の差があると思います。しかし、問題の要点、中心的な、問題は、自国と密接な関係にある他の国が侵略された場合に、その侵略されておる他国にまで出かけて行ってこれを防衛するということが、集団的自衛権の中心的な問題になると思います。そういうものは、日本国憲法においてそういうことができないのはこれは当然」

これは、集団的自衛権の行使について政府が表明した最初のケースだが、それ以来歴代の政府は、この見解を尊重してきたのである。

それを何故、いまになって蒸し返すのか。

安倍首相が日米同盟の強化を重んじていることは周知のことだ。その際に問題になるのが、日米が共同して敵に当たるという意味での集団的自衛権だ。これまでアメリカは日本に対して、ことあるごとに集団的自衛権を行使できるように求めてきた。その意向を受けた安倍首相が、なんとかして自分の手で、これに応えたいと思うのはムリもないところだ。ところが、現憲法のもとでは、集団的自衛権の行使は認めていない、というのが歴史上の定説になっている。だから、憲法を改正して、集団的自衛権が行使できるようにするのがベターだが、そうできない場合に備えて、現憲法のもとでも集団的自衛権の行使ができるように、憲法解釈を変えたい。これが、安倍首相の本音だろう。

安倍首相は、憲法を改正して防衛権を明確にし、その中で集団的自衛権の行使を合憲化するようにしたいと強い意欲をもっていたのであるが、その意欲に何らかの事情でブレーキがかかった。それは、おそらくアメリカからの圧力ではないか。そう筆者などは勘繰るところだ。

アメリカは当初、自民党の憲法改正に理解を示していたし、その中で集団的自衛権の行使がおおっぴらにできるようしてもらいたいという意向も持っていたはずだ。ところが、自民党の打ち出した改憲構想を見ると、国防権の確立の外に、余計なものが混じっている。立憲主義や基本的人権の尊重といった、アメリカが人類普遍の原理であると考えるものを、安倍政権は放棄しようとしている。これは見逃せない。そこで、いま安倍自民党が打ち出している改憲草案については、強い懸念を表せざるを得ない。そのアメリカの圧力を受けた安倍首相が、方向を転換して、憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を認めるようにと主張し始めたのではないか。どうもそんな風に受け取れるのである。

日頃から感じていることであるが、安倍さんには、自分の思い込んでいることを、権力を振りかざして実現しようとするところがある。そういう人間を日本の進路のかじ取り役にしておくのは、国民にとって非常に不安なことではないか。


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