陸游の五言律詩「晩秋の農家」(壺齋散人注)
我年近七十 我 年 七十に近く
與世長相忘 世と長く相ひ忘る
筋力幸可勉 筋力 幸ひに勉むべく
扶衰業耕桑 衰を扶けて 耕桑を業とす
身雜老農閒 身は老農の閒に雜じはる
何能避風霜 何ぞ能く 風霜を避けん
夜半起飯牛 夜半 起きて牛に飯せば
北斗垂大荒 北斗 大荒に垂る
自分はもう七十近くにもなり、世の中とは長く忘れあっている、だが筋力だけはまだ元気なので、老体にかかわらず農耕をこととしている(耕桑:耕作と養蚕)
老いた農夫に交わって働くのだから、風雪と無縁というわけにはいかない、夜中に起きて牛に飼葉をやれば、北斗七星が地の果てに架っているのが見える(大荒:地の果て、ここでは金に占領された土地を暗示する)
淳熙2年(1191、67歳)故郷紹興での暮らしぶりを歌ったもの。この詩を読むと、陸游が地元の農夫たちに解けこんで、ともに農耕にいそしむ姿が浮かんでくる。引退したとはいえ、高い官位を授かった身であり、しかも詩人としての名声は全国に轟いていた陸游ではあったが、そんな自分の身を気取ることなく、一般庶民に解けこんでいたというのは、陸游の飾らぬ人柄を物語っているのだといえる。
関連サイト:陸游を読む
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