ムバラク釈放でエジプト革命に幕引きか?

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エジプトでは、クーデター暫定政権がクーデターに反対する勢力を武力制圧する一方、2011年のエジプト革命によって権力から追放されたムバラク前大統領を、釈放する方針だと伝えられた。ムバラクはいくつかの容疑によって訴追されていたが、彼を訴追していた政治勢力がいなくなったわけだから、釈放するのは当たり前という論理なのだろう。

これでエジプトは、2011年の革命以前の状態というか、もっとそれ以前の、暗黒政治の時代に逆戻りすると言った指摘がなされている。それは一言でいえば軍事独裁政権への逆戻りということになるだろう。

これでは、2011年の流血は、全くなかったということにされかねない。なぜ、こんなことになってしまったのか。

最大の要因は、エジプトでは軍が自律的な権力を持つようになって、政治がそれをコントロールできないということにある。エジプトを巡ることわざに、エジプトでは国家が軍隊を持つのではなく、軍隊が国家を持っているというのがあるが、要するに政治が軍隊を制御できていないことが、こうした事態をもたらした最大の要因だと考えられる。エジプト軍は、北朝鮮軍と並んで、強大な政治的影響力を持つ勢力だとの評判が高いのだ。

ともあれ、これでクーデターの最終目的は達成されたといってよい。今後反クーデター派(ムスリム同胞団)との間で衝突が繰り返されるだろうが、圧倒的な戦力を持つ軍隊が、簡単に倒れるとは思えない。当面は、軍事独裁体制がエジプトを支配していくだろう。

こうしてエジプト革命には幕引きがなされる。その幕引きはまた、アラブの春にとっての終りの始まりをも意味するようだ。

ところで、エジプトでの今回の一連の事態に対して、日本のメディアは、朝日新聞など一部を除いて、及び腰だったように思える。なかには日経のように、ムスリム同胞団をイスラム原理主義と表現し、彼らがあたかもテロリストの仲間であるような言い方をしているのもある。彼らがこんな的外れな言い方をしているのは、モルシに対するアメリカの両義的な態度に影響されてのことかもしれない。

いずれにせよ、そんな日経の姿勢がエジプトの暫定政権に聞こえたら、大いに褒められることだろう。







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