何も決められなかったG20:シリアを巡る米ロの対立

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今年のG20はロシアのペテルスブルグで開かれた。ホスト役のプーチンにとって最大の懸案はシリア問題、ということで、アメリカが表明しているシリアへの軍事制裁を巡って激しいやりとりが行われた。その結果何かが決まったかと言うと、何も決まらなかった。対立が明確化したというだけだ。

そもそもG20は経済問題を協議するための集まりだ。その本来の議題である経済情勢について協議することが沢山あったはずだ。たとえばシャドウバンキングとか、グローバル企業への課税とか、あるいは景気減速気味の世界動向にどう対処していくかとか。しかし、それらの問題はまともに取り上げられず、シリア問題を巡るアメリカとロシアのさや当てだけが会議を振り回した。

これではG20の存在意義が問われるだろう。シリア問題のような政治的なイシューは本来国連が取り扱うべき課題だ。それをG20の場に持ち込むというのは、G20をミニ国連とする一方、国連そのものをバイパス化するものであり、G20にとっても国連にとっても好ましい事態とは言えない。

今回の対立の構造から浮かび上がって来たのは、アメリカの軍事行動を支持するグループと国連安保理事会の決定に従うべきだとする中露などのグループが対立する一方、ドイツなど明確な態度を保留したグループもある中で、G20としては統一した姿勢を決められなかったということだ。

今回はプーチンの強気な姿勢が目立った一方、オバマの慎重な姿勢も目についた。オバマは国内向きには議会の決定を尊重するという風に姿勢を軟化させ、対外的にもなるべく単独行動を控え、多くの国々の支持を獲得したいとする姿勢を示している。ある意味で、弱気ともいえる。ブッシュだったらこんなまどろっこしいやり方はしないだろう。対内的には、大統領には事前に議会の決定を求める義務はないし、対外的にも、国連がアメリカの意に反した方向をとるならば、アメリカは単独で軍事行動を起こす権利があるというのがブッシュの理屈だからだ。

オバマはシリア問題について抜き差しならぬ状態に陥っているという印象を与えている。今までの言動からして簡単には引っ込めないという面子の問題がある一方、かといって単独攻撃にまい進するというのも、大人げない。そんなことをすれば、国内的にも対外的にも大きな批判を浴びる可能性がある。そういう状況の中で、なにがもっとも中庸を得た方策なのか。それを探っているのかもしれない。

オバマはたぶんハムレットになった気持なのだろう。手を出すべきかしからざるべきか、それが問題だ。手を出せばしっぺ返しをくらうし、出さなければ馬鹿にされる。どちらに転んでもいい結果はない。つまり悪魔の選択に直面している、というわけだろう。(写真はDPAから)







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