オバマのシリア政策

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オバマ大統領がシリアのアサド政権に対する制裁について振り上げたこぶしを一旦ひっこめ、アサド政権が保有する化学兵器を国連の全面的管理下に置くというロシアの提案を受け入れたことについて、賛否様々な意見が世界を巡っている。一方では、オバマ大統領がプーチンの提案を受け入れたことを評して、オバマはプーチンにシテやられたのだと、否定的に突き放した見方をする者がいるかと思えば、オバマは無用な軍事行動路線を引っ込めて外交的な解決を優先させたのであるから、むしろ褒めてやるべきだとする見方もある。

どちらの意見も、いまやアメリカが一国で中東政策を左右できるほど強い影響力を持たなくなったという認識では一致しているようだ。一致と言うのが言い過ぎならば、アメリカによる世界秩序の維持と言うのは、もはや幻想になりつつあると、どちらの陣営も多かれ少なかれ感じているといったところか。

ブッシュの時代までは、アメリカはたとえ国連の議決が得られなくても、アメリカ一国の判断で、アメリカだけの武力を以て国際問題に介入したものだ。しかし、いまやそうした姿勢は、同盟国を含めた国際社会の理解が得られないばかりか、アメリカ国内からも支持されない。それゆえオバマといえども、ガムシャラにシリアに武力介入するという選択は、きわめて危険な賭けになっただろうと思う。

そんなわけだから、賛否様々なことを言われても、オバマとしては、これ以外の選択肢はなかったのだと、開き直るほかはあるまい。

オバマが今回もっとも残念だったのは、シリア制裁に対して国連安保理事会の承認を得られなかったことだろう。ロシアと中国がアメリカの政策に反対し続けたからだ。ロシアはアサド政権に深くコミットしており、アサド政権の崩壊を喜ばない。中国がロシアに協調するわけは、もっと違った理由からだと思われるが、いずれにしても、この二つの国が反対する限り、国連安保理事会の決定は得られない。

そのロシアだが、ロシアはアサド政権に対して多大な援助をしてきており、いまやアサド政権の存在を支える最大の友好国だ。さればこそアサド政権もロシアの顔を立てざるをえなかったのだろう。しかし、ロシアの顔を立てて化学兵器の国連管理を受け入れたとしても、それが完全に実施されるとは限らないし、また、反政府勢力への武力行使については、やめるとも何ともいっていない。ということは、アサド政権は、当面政権の存続を国際社会によって保障された上で、反政府勢力への攻撃を続けられるということを意味する。それ故、これではアサド政権の延命に国連がお墨付きをあたえたものだというような、批判も出てくるわけである。

アサド政権による自国民の虐殺をやめさせるには、国連安全保障理事会による強い姿勢が必要だ。それは今の状況では期待できない。ロシアと中国が相変わらず反対を続けるだろうからだ。それをアメリカはなかなか有効に非難できない事情がある。中東情勢について、イスラエルが無法なことをして国連の場で制裁の議論が出て来ると、アメリカは一貫してイスラエルの肩を持って反対してきた。そんな経緯があるから、今回ロシアがアサド政権の肩を持ったからと言って、それを非難できる資格はない。そんな風に批判されて、返す言葉がないからだ。








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