安倍首相の言葉遊び

| コメント(0)
先日行われたオリンピック招致委員会でのプレゼンテーションで、福島第一原発の放射能汚染水漏れについての国際世論の懸念に対して、安倍首相が「状況はコントロールされている」と答えたのは記憶に新しい。大方の人が「ほんとかいな」と疑問を持ったろうし、東電の担当者も「コントロールされているとはいえない」と首相の発言を否定するかのような言い方をしていたものだ。しかし大方の国民は、この発言のおかげで日本にオリンピックがやってきたわけだから、このさい大目に見ておこう、嘘も方便だ、と受け流したというのが実情だろう。

ところが安倍首相は、昨日(9月19日)福島第一原発を視察したついでに、汚染水の影響は一定範囲内で「完全にブロックされている」と重ねて宣言した。実際には、汚染水の海洋流出は続いており、首相の発言は事実に反している。これでは「嘘も方便」ではすまないだろう。少なくとも「言葉をもてあそんでいる」とのそしりは免れまい。

この際事実を整理すると、海洋に流れ出た汚染水の大部分は発電所の港湾区域内にたまっており、外洋に大量に流れ出ていることはないということだ。しかし港湾区域と外洋との間は遮断されているわけではなく、水のやり取りは当然ある。そうした事態をさして「完全にブロックされている」とはとてもいえない。

たしかに、安倍首相のいうように、いまのところ外洋への影響はほとんどないと考えてよい。しかしそのことから、「完全にブロックされている」という結論は出てこない。せいぜい言えるのは、「汚染水は今も海に流れ出ているが、幸いにもいまのところ心配するような影響はない」というくらいだろう。

安倍首相がどういう意図でこんなことを言ったのか筆者にはよくわからぬが、かりにも国民を欺く意図があったのではないことを祈る。こんなことで欺かれるほど、日本国民は愚かではないはずだ。







コメントする

アーカイブ