ウィグル人のレジスタンス

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新疆ウィグル地区におけるウィグル人のレジスタンスについて、モンゴル人研究者楊海英氏が雑誌「世界」にレポートを寄せている。中国国内におけるモンゴル人も少数民族と言う点ではウィグル人と共通した境遇にあるということで、ウィグル人の立場に立った書き方になっている。

氏はまず、新疆ウィグル地区が中国に編入されたのは18世紀の半ば、満州人による征服の結果だったといっている。それまで新疆ウィグル地区が中国の一部だったことは一度もない。ウィグル人自身も、自分たちが中国の一部だと思ったことなど一度もなかった。ウィグル人自身は自分たちを西方に展開するトルコ系民族の兄弟と思っていたわけだし、中国人は中国人でウィグル人を突厥という野蛮人だと見做し、彼らの住む土地を西域の一部だとみなしていた、西域とは中国の西側にある外国の一部という意味である。新疆という名称は満州人がウィグルの地を征服した際に、新しい領土という意味で名づけたものだ。

こんなわけだから、新疆ウィグル地区とそこに住むウィグル人たちはもともと中国とそこに住む漢人とは違った世界を形作っていた。1949年に新疆地区があらためて中華人民共和国に組み込まれた際には、漢人はたった29万人しかいなかった。それが今日では800万人にもなり、ウィグル人の数を圧倒している。ウィグル人にしてみれば、古来自分たちの土地だったところに大量の漢人が進出し、自分たちはいつのまにか少数民族の境遇に追いやられてしまった、というわけなのである。

こういう状況の中でウィグル人は絶望的になり、レジスタンス運動へと掻き立てられている。そうした運動に対して中国政府は血の弾圧を以て臨んでいる。こうした状況が進んでいけば、そのうち新疆ウィグル地区の問題は、イスラエルにおけるパレスティナ問題と似たような様相を呈するようになるだろう。

この報告では触れていないが、同じような問題はチベットにもある。むしろチベットのほうが深刻かも知れない。その深刻さを物語るように、一昨年から昨年にかけて、抗議の焼身自殺が相次いだことは記憶に新しい。

異民族と彼らが住む地域に関する中国政府のやり方には特徴がある。形のうえでは「自治」を保証するとみせかけて、実際は共産党の出先政府が実質的な統治を行う。その一方で漢人を大量に流入させて事実上先住民族をマイノリティの立場に追いやる。イスラエル政府と同じようなことをやっているわけだ。

何しろ中国人は公称部分だけでも13億人、実際には14億人以上いると言われる。この膨大な人口の一部を移動させるだけでも、新疆やチベットは中国人(漢人)だらけの地になってしまう。このように、なし崩しに中国人を流入させて、いつのまにか中国人が多数を占めるような土地にしたうえで、そこを徐々に中国化していく。これが中国流のやり方だ。

こうした中国のやり方に対して、ウィグル人やチベット人はなすすべもない、というのが実態のようだ。彼らが絶望する気持もわかろうというものだ。

(参考)楊海英「ウィグル人のレジスタンスは何を発信したのか」(世界2014年1月号)


関連サイト:中国を語る 







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