わかりにくいタイ情勢:反タクシン派の首都封鎖

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タイで反政府勢力が大規模デモを重ね、ついには首都封鎖という過激な行動をとっているようだが、その背景にはいまひとつよくわからないところがある。今回のデモのそもそもの発端は、昨年11月に恩赦法が下院で強行採決され、タクシン元首相がその対象に含まれることに、反タクシン派が反発したことだ。その際には、反タクシン派の反発を考慮したインラック首相が上院での可決を(多数派を抑えているにかかわらず)あきらめて、法案を廃案にしたが、それに勢いづいた反タクシン派が、(タクシン派である)インラック政権の打倒を目指して引き続きデモを続けているということだ。

これに対してインラック首相は、先般解散した下院の選挙を2月2日に実施し、そこでの勝利を以て自分の政権基盤の正当性を訴える戦術を取っているが、これに対して反タクシン派は、総選挙の結果タクシン派が勝利するのは目に見えているというので、この総選挙のボイコットを訴えるという奇妙な戦術をとっている。つまり、反政府運動といいながら、その政府が国民大多数の支持を受けるのは違いないので、選挙とは異なった形で政権を打倒したい、というふうに反タクシン派は考えている、そううけとれるわけだ。

反タクシン派は、デモを盛り上げることで危機的状況を演出し、軍による介入を期待しているふしもあると言われる。もしそうだとしたら、今回の反政府運動は民主化に向けた運動とはいえないことになる。国民不在のところで、権力争いをしているだけではないか。

そんなわけで、今回のタイの騒ぎは非常にわかりにくい。日本のメディアが、騒ぎの様子をただそのまま伝えるだけで、その背景を分析しようとしないことも、情報不足と相まって、いっそう事態を見えにくくしている。







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