タイとエジプト:支配層の反乱

| コメント(0)
タイの情勢をみていると、エジプトとの類似に気づかされる。どちらも、選挙で民主的に選ばれた政府を転覆し、それ以前の体制へと逆戻りすることを意図している。エジプトの場合には軍による秩序の安定、タイの場合には選挙とは無縁の、支配者によって任命された人々が上院議員を選ぶというやり方への復帰だ。どちらの国でも、こうした反動的な政策を追求しているのは、上層階級や中層の比較的豊かな人々だ。彼らが民主主義よりも、自分たちの階級的な利害を優先するあまり、選挙で選ばれた政権を転覆しようとしている。どうもそのように見える。

タイでは、2001年にタクシンが政権を取って以来、選挙のたびにタクシン派が勝ってきた。その権力の源泉は、タクシン派が都市部の貧困層や農村から絶大な支持を受けているからだ。その背景にはタクシン派のポピュリスト的な政策が効果を奏したことがある。

タクシン派の支配に愛想を尽かした支配層を代表しているのが民主党。今回のデモも民主党が旗振り役を勤めている。民主党は、選挙のたびに負けて来たので、2006年には非常事態としてのクーデターに訴えてタクシンを追放したのだが、その後の選挙ではタクシンの妹のインラックが勝った。そんなわけでタイの支配層は、選挙を通じては自分たちの意思は実現しないと知り、デモなどの手段に訴えることで、軍の介入を期待するようになった、というのが真相のようだ。

エジプトでは、富裕層や中間層からなる支配層が、貧しい人々に影響力をもつイスラム同胞団を、選挙によっては倒せないと知ってデモに訴え、それが効を奏して軍の介入を招いた。タイの支配層も同じようなことを目指していると見られる。









コメントする

アーカイブ