日本がアメリカに核物質を引き渡すワケ

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朝日の今日(三月二四日)の朝刊一面に、「核物質 米に引き渡しへ~テロ対策に協力」という記事をみてびっくりした。まず、どういう意味かわからなかったからだ。第一テロ対策に協力とはどういう意味だ。三面の解説記事を読むと、アメリカは核物質についての日本のテロ対策が不十分だとの危機感を抱き、日本に対して、核兵器への流用可能な核物質の管理について万全の措置を求めているが、その一環として、東海村で保有している核物質を、アメリカ側に引き渡すよう要求し、それに対して日本側が応じたというふうに書いてある。

原発など核施設をめぐるテロについての日本の対策が不十分だということもショッキングだが、それ以上にショッキングなのは、アメリカの要求に応えて、日本側が簡単に核物質を明け渡してしまうということだ。いくらアメリカに問題点を指摘されたからといって、それを鵜呑みにして、核物質を引き渡すなどということは、なかなか考えられない。これでは、国家主権もなにもあったものではない。

解せないのは、安倍政権も当然知っていながらそれを許しただろうということだ。というのは、安倍政権にとっては、スムーズな核兵器開発に必要な核物質を確保しておくというのは至上の命題であるはずだからだ。だから、その虎の子の核物質を簡単にアメリカに引き渡すというのは、考えがたいことだ。その考えがたいことを安倍政権が許したことの背景には何か事情があるに違いない。そう筆者はとっさに思ったのであったが、その事情はすぐにわかった。

現在日本には、原爆の材料となる核物質は、今回問題となった東海村保有のもの以外にもある。東海村で保有し、今回アメリカに返却される予定の核物質は、せいぜい百キロ単位だが、それ以外に日本は40トンのプルトニウムを保有しており、それは当面引き渡しの対象にはなっていない。また、青森県六ヶ所村の再処理施設で、さらに多くの核物質を生産する体制ができている。

こんなわけで、東海村にある核物質をアメリカに引き渡しても、原爆の材料になる核物質はほかに沢山ある。だから今回、とりあえずアメリカの要求に応じて東海村の核物質を引き渡しても、核兵器開発計画(そういうものがあるとして)にはなんらの支障もない。

安倍政権はそう考えて、今回東海村の核物質をアメリカに引き渡したのだと思われる。そう筆者は考え及んだ次第なのであった。

ともあれ今回の事態は、アメリカに対する日本の従属体質を、あらためて明るみに出したといえよう。







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