年金が二度目に消える時

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先日、公的年金資金が株式投資に運用されようとする動きについて、このブログでも紹介したところだが、その動きがどうも本格化しそうだ。安倍首相の強い意向を受けて、公的年金の管理者である年金積立金管理運用独立行政法人とその上級官庁である厚生労働者とが、公的年金を株式市場で運用する姿勢を強めているというのだ。

もしこの動きが本格化して、公的年金資金の大きな部分が株式市場に運用されることになれば、一部の能天気な連中が言うような、年金資金の増加といった事態よりも、年金資金の目減りといった事態が実現する可能性の方が大きい。場合によっては、年金資金の大部分が毀損されるといった事態も考えられないではない。

先稿でも述べたように、日本の役人は、株式市場で高度な知的ゲームをするような能力も意欲も持ち合わせていない、というのがその根拠だ。それに加えて、日本の政治家の無責任ぶりを考えれば、どんな事態が待ち構えているか、小学生でもわかろうというものだ。

かつて、消えた年金問題というのが日本中を揺さぶった。その際には、年金の加入資格を証明する書類が消えてしまったことが問題になったわけだが、株式投資で失敗して年金資金が消えてなくなるようならば、もっと深刻な事態が訪れることになる。最初の「消えた年金問題」では、年金の受給資格が消えてしまったことが問題になったわけだが、二度目の「消えた年金問題」では、そもそも給付すべき年金資金そのものが消えてなくなったということになりかねない。

しかし、この問題の火付け役である安倍首相には、そういう危機感はないらしい。彼にとっては、目先の景気を良くするのが課題なのであって、年金の株式投資はそのための手段に過ぎないようだ。株式投資が成功すれば、景気の底上げと年金資金の増加という一石二鳥の効果が得られるし、かりに失敗することがあっても、そんなことは「ぼくちゃん」のせいではありません、それは、世の中の勢いだと思って、あきらめるしかないではありませんか、とでもいって居直るつもりなのかしら。







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