京都観庭記2:青蓮院・知恩院

| コメント(0)
140304.kyoto201.jpg
(青蓮院庭園)

青蓮院は地下鉄東山駅からゆっくり歩いて十分くらいのところにあった。ここは青不動と呼ばれる不動明王図で有名なところだが、庭園もなかなか見ものとの評判だ。室町時代に相阿弥によって造営されたものだが、寺院本体の創建はずっと古く、平安時代初期に遡る。もともとは延暦寺の末寺として比叡山の上に立っていたものを、鎌倉時代以降、門跡寺院になったことにともない、現在地に移転してきたという。

瀟洒な門をくぐると、僧坊の玄関に受付があり、そこを通って各建物の内部を廊下伝いに巡覧するようになっている。青不動の掛軸は最も奥の僧坊に懸けられていたが、日頃は複製品が懸けられており、本物はめったにお目にかかれないとのことである。今年の十月に、久しぶりに一般公開される予定であるから、ご都合がつきはりましたら是非おこしやす、と案内のお寺の女性係員から勧められた。

庭に出ると、相阿弥作という池泉回遊式庭園が広がっている。この庭園は隣接する山の斜面と一体となっており、かなり雄大だ。中心には竜心池という池泉があって、背後の斜面から流れ出た泉の水が滝となって流れ込み、また池のなかほどには巨大な石が横たわっている。

この庭園に隣接してもうひとつ小堀遠州作の庭園があるはずであったが、筆者らはうっかりしてそこをやり過ごし、右近の橘、左近の桜の植わっている本殿前の庭に迷い込んでしまった。だが、そこも深く蒸した苔がなかなか風情を感じさせ、決してつまらぬ眺めではなかった。

そこから四脚門をくぐって外へ出ると、両側に巨大な木が幾本か聳え立っている。樹齢数百年という楠の古木で、国の天然記念物に指定されているそうである。地上に伸び広がった根っこにも苔がこびりついていて、如何にも星辰の軌跡を感じさせる。

140305.kyoto202.jpg
(知恩院山門)

青蓮院の隣りは知恩院である。長い石段を上りつめると巨大な山門がある。これは別名を三解脱門といい、それを略して三門ともいうのは、芝の増上寺と同じである。ちなみに増上寺も浄土宗の大本山である。

境内を一周しようとしたところが、間もなく閉門というアナウンスが流れたので、脇の坂道を伝って下山し、丸山公園へと抜けた。時間にゆとりがあれば、高台寺の庭園にも立ち寄るつもりであったが、そのまま宿に投じた。

この宿は、ミシュランにも登録されているというが、旅館業より料理屋業に精を出していると見えて、四時を過ぎているというのに、料理の手配に忙しいらしく、なかなかチェックインができない。

だが部屋のたたずまいはマアマアだったし、風呂も温泉でこそないが、ゆったりと作られており、体を伸ばして湯につかることができた。また、料理の方も、さすがミシュランに登録されているだけあって、十分満足できるものだった。京懐石を食いながら燗酒を飲み、日頃の屈託を洗い流した次第だ。

食後一部屋に集まって飲み続けたのはいうまでもない。なにせ、うわばみの寄合いみたいな集団であるから。





コメントする

アーカイブ