捕鯨中止命令は日本外交の敗北か?

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南極海における日本の調査捕鯨について、国際司法裁判所が中止命令の判決を出した。事前の予想では、ここまで厳しい判決が出るとは"誰も"思っていなかったとして、国内では大騒ぎになっている。その見通しの甘さについて、担当官僚は、安倍首相から厳しく叱責されたということだ。この男には、もう出世の見込みはないだろう。

メディアの分析等によれば、日本は国際世論の厳しさを読み誤ったということらしい。その証拠に、日本側は今回の訴訟に備えて、著名な国際法学者や英、仏などの法律顧問まで雇い、万全の体制で臨んだとして、慢心していたフシがあるという。その慢心が、恐らく安倍首相を含めた政治家にまで感染し、甘い見通しを共有するようになったらしい。それが粉砕されるようにして、今回の厳しい結果になったわけだから、安倍首相としても怒りが収まらないということだろう。

しかし、安倍首相には、外交当局を攻める資格があるのか。たしかに、日本の外交当局は、国際世論の動きを見誤り、そのことで訴訟に敗北した、と言うことは間違いない。だが、外交というものは、外交官たちの専売特許というわけではない。外交について、基本的な方針を示し、それに基づいて高度の外交交渉をするのはむしろ政治家の役割のはずだ。それを、なにからなにまで外交官に丸投げし、その結果うまくいかなかったといって、外交官を責めるのは、政治家としてフェアなやり方とは到底いえまい。

今回の問題については、政治家と外交官を併せ含めた日本の政治のあり方に問題があったと見た方が良い。国際世論についての客観的で確かな分析を怠り、そのかわりに自分の希望的観測に基づいて判断する。そういう主観的で根拠のない判断のメカニズムが働いていたのではないか。つまり、日本として捕鯨は大切だ、その大切なものを否定されるのは我慢ならない、我慢ならないことは起って欲しくない、起こって欲しくないことはきっと起らないに違いない、だから日本人はこの問題を楽観視してよい十分な根拠があるのだ、というわけであろう。

これは、日本政治のガラパゴス化を象徴するような出来事といえる。現下の日本政治は、色々な局面で国際的な摩擦をみずから引き起こしているが、これも日本政治のガラパゴス化に原因がある。政治におけるガラパゴス化とは、要するに唯我独尊ということで、他国(国際社会)のことを考慮できないということだ。それはある種の病気であるといってもよい。

与党の諸君の中には、今回の事態を聞いて逆上するあまり、日本は国際条約から脱退しても、捕鯨を強行すべきだと息巻くものもいるときくが、これもガラパゴス化のもたらす一例である。

安倍首相が先頭になって、こんな調子で進んでいったら、いずれ日本は世界中を敵に回しかねない。







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