村上誠一郎議員の気骨

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安倍政権下の自民党にも、まだこんな気骨のある人が生き残っていたか、と感じさせる人がいた、村上誠一郎衆議院議員だ。氏は雑誌「世界」のインタビューに応えて、安倍政権の危険性について、ナチス・ドイツと比較するなどして、歯に衣着せぬ率直な発言をしている。現下の日本政治を覆うムードを考えれば、余程の気骨がなければ、こんなことは言えない。

氏はまず、解釈改憲で集団的自衛権を容認しようとする安倍政権の動きを、次のように言って批判する。

「閣議の決定で解釈を変え、それに基づいて自衛隊法を改正するということは、下位の法律によって上位の憲法の解釈を変えるという、絶対にやってはいけない『禁じ手』です」

何故自分がそういうのか、それはナチス・ドイツの歴史を思い起こすからだと氏はいう。「ナチス・ドイツが全権委任法を議会で成立させ、実質的にワイマール憲法を葬り去っていった歴史です。安倍さんの解釈改憲は、それと同じ愚を繰り返す危険性がある。だから私は反対しているのです」

氏の反対は、実際には中々安倍首相には届かないと思う。安倍首相は、自分には愚を犯しているという自覚はないだろうからだ。むしろ、憲法を骨抜きにしても、自分の野心を成就させたい、そう思っているに違いない。

それに対して氏は、憲法についての持論を重ねて主張する。「我々は憲法を尊重し遵守する義務があるのです。政治家が守らなければいけないのは、立憲主義であり、三権分立です。安倍さんがやろうとしていることは、その三権分立や立憲主義の基本を無視し、それを壊す危険性をもっている」

安倍首相が、解釈改憲を容易にするための布石として、自分と考えの近い人物を内閣法制局長官に据えたことに関しても、手厳しい。「法制局は法律的良心に従うべきで、何が政府にとって好都合かという姿勢で、その場しのぎの無節操な態度をとるべきではないのです」

全く以て正論と言うべきである。その上、氏は、無節操なのは内閣法制局長官だけではない。政治家もみな無節操だ、という。それは今の選挙制度に問題がある。小選挙区制度のもとでは、若い議員は、任期中はただ次の選挙で党の公認を得ることばかり考え、また当選回数を重ねた議員も、ポストをちらつかせられると、物言えば唇寒しの状態になるといって、「政治家がそんなことでいいのか」と慨嘆している。

氏の慨嘆は、日本の政治にとって、まさしく本質をついていると思う。





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