原発再稼働は核武装への意思のあらわれ?

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安倍内閣が新たなエネルギー基本計画を閣議決定し、原発再稼働の方針を明記した。注目すべきは、既存の原発を再稼働するにとどまらず、原発の新増設も否定していないことだ。つまり、安倍政権は原発の復権に向けて全面的に舵をきったということだ。原発村の住人達はさぞ大喜びだろう。なにせ、民主党政権時代に決定された「原発ゼロをめざす」という方針を葬り去ることができたわけだから。

これに対しては、メディアを中心に様々な批判が出されているが、安倍政権には全く届く気配がない。というもの、どの批判も的を外れているからだ。批判者は、原発の危険性を説き、福島のつらい経験に触れ、原発にかわるエネルギーの重要性について指摘するが、そんなことは安倍政権といえども十分にわかっている。今回の原発再稼働の判断のもとになったのは、そんなことではない。安倍政権にとっては、原発は安全保障上の問題なのだ。日本の右派勢力はこれまでも折につれ、原発の意義を説明する中で、安全保障上の抑止力を含めてきたが、安倍政権もそうした観点から原発の再稼働を判断したと考えられる。

原発をゼロにすることは、原子力に関する日本の技術力の低下をもたらす。そのことは、日本の安全保障上の抑止力の低下につながる。一方、中国や北朝鮮では原発はおろか核兵器開発も公然と行われている。これでは、日本は自分から丸裸になるようなものだ。

右派本流の安倍政権としては、それは悪夢に等しい。ここは、どうしても原子力大国の面目を維持し、いつでも、ただちに、核武装できるような体制を維持しておくことが必要だ。でなければ日本は、お人よし国家として世界の嘲笑を買うだろう。安倍政権には、そんな思いがあったのだろうと思う。

だから、安倍政権による原発回帰は、日本の核武装への意思のあらわれだと受け取ることもできる。しかし、何のために核武装する必要があるのか。

当面は中国への牽制が主な目的なのだろう。中国はすでに、かなりな規模の核兵器を保有している。日本を殲滅させるには十分な規模だ。だから、万が一これを行使されては、日本はたまらない。それどころか、地球上から消されてしまうかもしれない。そんなことにならないためには、日本も核武装し、それを抑止力として、国の安全を図るべきだ、そう安倍政権が考えたとしても不思議ではない。

対中国政局に加え、地球規模の政局においても、日本はますます難しい立場に立ちつつある。安倍政権のナショナリスティックな行動のおかげで、日本はアメリカとの関係までギクシャクするようになり、孤立化が目立ってきた。このままどんどん孤立して行ったらどうなるか。手をこまねいていては、孤立が破滅に至らないとも限らない。そこで、孤立しても破滅しない方策として核武装が選択肢に入ってくるというわけだろう。

世界中から孤立しながら、核武装のおかげで破滅せずに済んでいる先輩国家がある。イスラエルがそれだ。イスラエルは、周辺諸国から孤立するのみならず、最近はアメリカとの関係までおかしくなっている。それでも、国家として矜持を保っていられるのは、核武装をしているからだ。

場合によっては、そんなイスラエルのような国家になること、これが安倍政権の戦略なのかもしれない。なにしろ、本音においては対米自立を目指していると思われる安倍首相だ。それくらいのことを考えてもおかしくはない。

しかし、日本のイスラエル化がうまくいくとは限らない。イスラエルの周辺国家は、いまのところ弱小でかつ思惑もばらばらだが、日本の周辺はそんなわけにはいかない。だから日本は、核武装することでイスラエル化するよりも、北朝鮮化する可能性の方が大きい。





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