
(聖武天皇宸筆「雑集」)
「国家珍宝帳」所載のもの。奥記天平三(731)年の署款があり、天皇31歳の時の宸筆だと知れる。内容は、六朝時代から隋、唐にかけての仏教に関する史文類を抄録したものである。それ故「雑集」といわれる。
文字は肉細で、ちょっと見たところ女性的な繊細さを参じさせないでもないが、一文字づつ注意してみると、なかなか躍動感を感じさせ、唐の書家褚遂良の書体を想起させる。なお、紙には唐舶来の白麻紙を用いている。

(光明皇后自筆「杜家立成」)
これも「国家珍宝帳」所載のもので、光明皇后の自筆になるものである。夫君の聖武天皇の字体と比べると、一層雄勁さを感じさせ、むしろこちらの方に男性的なものを感じさせる。
「杜家立成」とは、隋末唐初の人杜正蔵の現したもので、書簡の文例集ともいうべきものである。併せて36種の往復文例計72編を示したものであるが、本場の中国では既に滅びて今は伝わらない。
紙は、数種類の色麻紙を用いている。これも唐からの舶来品だと思われる。これとは別に国産の紙も保存されており、当時すでに我が国において紙を産出していたことを物語っている。それらは、麻紙、楮紙、雁皮紙などであり、我が国独自の製法である流漉きの方法も認められるという。
関連サイト:日本の美術
コメントする