エズラ・ヴォ―ゲル日本のいまを憂える

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「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の著者で知られるエズラ・ヴォーゲル氏が、朝日新聞のインタビューに答えて、現在の日本の政治状況について憂慮の念を表していた。安倍政権が登場して以来、日本では過去を正当化しようとする議論が湧きあがっているが、日本がそうすればするほど、国際社会の信頼を失うことになるといって、日本の向かう先を憂慮している。

インタビューの中でとりわけ印象的だったのは、安倍首相にかぎらず、最近の日本の指導者には戦略的思考が見られないといっていたことだ。中曽根康弘や福田赳夫にはそれがあった。ところが1990年台以降、日本の政治家と話しても長期的なビジョンが見えない、というのだ。

たしかに、安倍首相の言動を見ていると、日本国民の筆者でさえ、長期的なビジョンの欠落を感じさせられる。たとえば対中政策だ。この隣人としては運命的な関係にある国家に対して、日本として今後どのように関わっていくのか。それを百年単位のスパンで長期的に展望する必要があるのに、安倍政権はどうも、目先の利害にとらわれて対応しているとしか受け取れない。

中国が今後、アメリカと匹敵するか、それよりも強大な国になることはほぼ確実だ。そんな潜勢力を持った国と、長期的に良好な関係が築けないということは、日本としては深刻な問題だと言わざるを得ない。安倍首相は、中国を敵視するあまり、ロシアと手を結ぶことまで考えているようだが、これは現実的にも道義的にも支持できることではない。中国との間には確かに尖閣問題があるが、日本はまだ中国にひどい目にあわされたわけではない。それに対してロシアは、日本に対して過去に筆舌に尽くしがたいほどのひどいことをしたばかりか、現にいま現在も日本の領土を侵略し続けている。中国をけん制するために、侵略されている国と手を結ぶなどというのは、それこそ噴飯ものである。

安倍首相がこんな不合理な行動に走るのは、過去をきちんと把握できていないせいだ、と筆者も考える。安倍首相は、自分が行なった靖国参拝がなぜ中韓両国の猛烈な反発を生むのかよくわからないといった風情だが、それは、他者の立場に立ってものを考えることができないからだろう。靖国神社には、いわゆるA級戦犯が合祀されているばかりではない。日本のアジア侵略を正当化する遊就館のような施設を併設している。それゆえ、この神社をおとずれた外国人に、靖国神社は日本の軍国主義の象徴だ、と受け取られても致し方のない側面がある。

南京事件についても、日本は中国側が持ち出す犠牲者の数を問題にするが、本当の問題は数などではない。問題は、たとえ数がもっと少なくとも、それで日本軍の行ったことが正当化されるわけではないということだ、と氏は言っている。

そのほかに従軍慰安婦の問題にも言及しながら、日本が過去に中国や韓国に対して加害者だったことは間違いないのだから、その点は素直に謝って、前向きな関係を築いていく必要があるとアドバイスもしている。

なお、氏は日本の緒方貞子女史、韓国の韓昇洲氏とともに、日韓関係の改善を呼びかけるメッセージをワシントン・ポストに寄せた(4月12日付紙面)というので、それを読んでみた。その中で、日本の過剰な愛国主義が問題を複雑化していることに触れながらも、それは日本人全体を代表するものではないのだからとして、両国が関係改善に向けて努力するよう、呼びかけていた。

たしかに昨今の日本では過剰な愛国主義が溢れかえっているようだ。週刊誌の中吊り広告を見ても、反中、反韓を煽る言葉が怒涛のように迸っている。そんな光景を見ると、日本人はいつからこんな激情型の種族に進化したかと、いぶかしい感じをさせられないでもない。







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