日米同盟の再確認:オバマ来日の成果

| コメント(0)
最大級のおもてなしでお迎えした甲斐があって、安倍首相はオバマ大統領からすばらしいプレゼントをもらうことができた。尖閣諸島について、アメリカは防衛義務を果たすと明言してもらったことと、安倍政権がいま進めようとしている集団的自衛権の憲法解釈変更による容認に支持を得たことである。一方、ほぼ時期を同じくして閣僚らが行った靖国参拝についてはとがめられことがなかったし、今回のオバマ来日の最大の目的であったTPPの妥結についても、何とか先送りすることができた。安倍首相としては申し分のない結果であり、喜びに耐えないといったところだろう。

尖閣の防衛義務については、先年ヒラリー・クリントンが国務長官時に明言したところであるし、現在のヘーゲル国防長官も明言しているところであるが、やはり大統領自らコメントすることには大いなる政治的意義がある。それは、一方では同盟国である日本の信頼を強める効果を持つが、他方では相手国の中国を刺激する効果もあるわけで、オバマ大統領としては、尖閣の防衛を確約する一方で、日中双方が緊張の緩和に向けて努力するように、(とくに安倍首相に向けてと思われるが)強調していた。

オバマ大統領が、あえてこのような言動に踏み切った背景には、アメリカの威信の低下に対して、同盟国が不信感を持ち始めているのではないかという懸念があるようだ。特に、東アジアでもっとも重要な同盟国である日本が、最近オバマ政権に対する不信感をつのらせている。また、フィリピンをめぐっては、オバマ政権が中国に対して融和的な態度をとったことで、中国に南沙諸島への侵攻を許し、フィリピンの厳しい批判を浴びたという苦い経験がある。中東におけるオバマのいわゆる弱腰外交が、同盟国の不安を掻き立てているという事情もある。

そんなわけでオバマは、アジア重視政策を裏付けるものとして、また日米同盟のゆるぎなさを再確認する意味で、同盟義務の尊重に言及したと思われるフシがある。

一方安倍首相は、オバマからお墨付きをもらったことで、中国による尖閣侵攻の可能性に対して、それなりの覚悟をつけることができると感じたに違いない。それに、中国が尖閣を攻めることは、日米を相手に戦争をすることを意味する、ということを中国側にわからせることができれば、中国も無謀なことはしないだろう。

集団的自衛権についても、安倍首相はオバマ大統領のお墨付きを最大限に利用して、一気に決着させようとするだろう。これが決着すれば、日本は地球上のどこへでも出かけていって、アメリカと一緒に戦争することができるようになるわけだが、それ以上に、アメリカのほうも日本に対して戦争への協力を持ち掛けやすくなるだろう。そんなわけで日本は、安倍首相念願の「戦争ができる普通の国」になれるわけだ。

こんなわけで今回は、安倍首相はオバマ大統領をうまく料理した、といえるのではないか。







コメントする

アーカイブ