EU議会選で反EU派が躍進

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EU議会選が5年ぶりに行われ、反EU派が躍進した。フランス、イギリス、ギリシャでは第一党になり、全体でも3割の議席を獲得した。ギリシャで第一党になった急進左翼連合は左翼を名乗ってはいるが、主張はナショナリスティックであり、フランスで第一党になった国民戦線は極右政党として知られている。各国でEUへの批判的な意見が、ナショナリスティックな勢力の躍進をもたらしたといえる。

この動きの背景には、ヨーロッパ諸国における、経済停滞がある。経済停滞の結果、各国の失業率は高止まりし、それが国民の不満を高め、その不満の矛先がEUに向けられているといえる。というのも、EUの域内統合の結果、労働力が流動化し、フランスなどの持てる国では、移民のために職を奪われるといった事態が進行する一方、ギリシャなどの持たざる国では、EUによって財政緊縮を強制され、それが大量の失業をもたらしているという不満が渦巻いているからだ。

それ以上に、EUによって各国の主権が制約されているという批判が強まっていることが、今回の反EU勢力の躍進につながったといえる。EUは、ヨーロッパの統合を通じて、平和でかつ豊かな社会を作り上げるのだとする理念を歌い上げているわけだが、統合の都合が優先される結果、各国の主権が制約され、その結果、各国における民主主義が危機に瀕するようになった、という批判がこのところ強まっている。

EUによって利益を受けるのは、ドイツなど一部の豊かな国と、グローバルに展開する国際資本であって、それ以外の国と一般の民衆にとっては、EUはなんらの恩恵をももたらしていない。そうした怨念のようなものが、反EU感情につながっているのではないか。

反EU勢力にとっては、EUの官僚機構は、各国の主権を踏みにじり、自分たちの利害を追及するあこぎな連中として映っている。そうしたあこぎな連中が、共同戦線を張って、普通のヨーロッパ市民を苦しめている。そんな連中は許せない。彼らを打倒して、もう一度国家主権を取り戻そう。そういっている反EU勢力の主張が、あなどれない力を持ち始めたということだろう。







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