無法地帯化するウクライナ東部

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ドニェーツク、ルガンスク、ハリコフといったウクライナ東部諸州では、親ロシア派住民による地方政府庁舎や警察署などの占拠が続き、行政はおろか日常生活が麻痺する事態が生まれている。今や、ウクライナ政府はこれら地域に対する統治能力を失っており、これらの地域はもはや無法地帯と化していると言ってもよい。

こうした事態に対して、ウクライナ政府は自嘲気味だ。市民の安全を守る立場にある地方機関が全く機能せず、親ロシア派の横暴を許しているのは、犯罪的な裏切り行為だと言って、彼らを攻めているが、だからといって事態が好転する見込みはまったく立たない。

これらの地域の行政機関、とりわけ警察や治安部隊が、親ロシア派の横暴を許しているのには、それなりの事情があるようだ。彼らは、つい最近まで反ヤヌコーヴィチのデモを鎮圧するためにキエフに派遣されていたのだが、いまでは自分たちが取り締まろうとしていた連中が権力の座についている。その新しい主人は、自分たちに対してろくな給料も払ってくれない。そんな連中のために命をかけて働く気にはなれない、こういう感情が彼らの間に蔓延しているというのだ。つまり、キエフの新しい政府は、国土全体に対して権威を確立できていない、そのことが今の事態を複雑にしている要因のようなのだ。

親ロシア派の背後にロシアがいることは隠しようのないことだ。プーチンが、どのような事態を最終的なものとして想定しているのかは、かならずしも明らかではないが、ウクライナ東部にロシアの強い影響力を残そうとは考えているだろう。それは、クリミアのようにロシアへの編入と言う荒っぽいやり方から、東部諸州の自治権の拡大などの穏健なやり方までバリエーションがあると考えられるが、いずれにしても、ウクライナを無傷のままに残してやろうとは思っていない可能性が強い。

これに対して、EUやアメリカは、口先だけは厳しいことを言っているが、行動の方は今ひとつ及び腰だ。アメリカはともかく、EUの方は、ロシアとの間に強固な経済関係を築きあげてきており、それを一夜にしてご破算にするようなことは避けたい。そうした思惑があるから、及び腰にならざるを得ないので、プーチンもそれを見透かしているから、強気でいられるのだろう。







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