日本の児童養護施設

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先日、児童養護施設(いわゆる孤児院)を舞台にしたあるテレビ番組が、入所児童の人権を侵害するような心無い演出をしたことで、世間の強い批判にさらされたことがあったが、この番組は、二重の意味で、人権感覚に欠けていた。児童施設を色眼鏡で見ることによって、入所児童の人権を侵害していることがひとつ、もう一つは、このような児童養護施設が社会的には何らの問題をも抱えていないように描くことで、養護を必要としている児童についての認識を曇らせているという点だ。

孤児や被虐待児童については、養子縁組を通じて、新しい親を世話するというのが、いまや世界的な傾向となっている。たとえばアメリカでは77.0パーセントの対象児童について養子縁組が成立しており、オーストラリアに至っては、その割合は93.5パーセントに達している。(Japan Times 調べによる2012年のデータ)

これに対して日本では、対応する数字はわずか12パーセントに過ぎない。大多数の対象児童は養護施設に入れられている。ところが、こうした施設に入れられた児童は、発達上の障害や成人後の社会適応不全につながる可能性が非常に高いと指摘されている。

日本で施設入所の割合が高いことには、歴史的な背景があると考えられるが、それにしても、高すぎるのではないか。これには、児童福祉の現場で、担当者が施設入所を選択する動機が強く働いているといった事情もあるようだ。たとえば、施設の側から役所に対して子どもの斡旋を強く求めてくるような風土があったり、施設入所の方が手早く問題の解決につながると判断されたりすることだ。これでは、子どもの福祉が優先されているのか、施設や役所の都合が優先されているのか、わからなくなろうというものだ。

日本も今後は、要保護児童について、養子縁組の割合を高めていく努力が必要だろう。

(参考)Japan's orphans neglected: HRW By Tomohiro Osaki Japan Times





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