タイのエリート層がインラック首相の罷免に邁進

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タイの憲法裁判所が、三年前の人事を巡ってインラック首相に職権乱用があったとして有罪判決を言い渡した。タイの憲法の規定では、職権乱用で有罪となった首相は罷免されることになっている。このまま大きな混乱が起こらねば、インラック首相は失職することになる。

これは、タイのエリート層が仕組んだことだとの解釈がもっぱらである。民主党執行部を司令塔にしたタイのエリート層は、昨年の暮から反インラック政権の動きを見せ、首都封鎖などの荒っぽいことまでやってきたが、それは、タクシン・インラック兄妹によるポピュリズム政治を終わらせ、エリート層に都合のよい政治にもどそうとする動機に駆られたものだ、というわけである。

先般は、民主党の戦略が効を奏して、下院の選挙が無効になり、現在は上院だけの片肺議会の状態である。そこで民主党では、下院の再選挙を実施せずに、そのかわりに上院が選んだ賢人会議に新しい内閣の指名権を与えようと画策している。しかしこれは、全く憲法を無視したやり方だ。憲法の規定をたてにインラック首相の追い落としを図った人々が、その憲法を棚上げする形で、自分たちに都合のよい政権を作ろうとしているわけである。

インラック政権の息がかかった選挙管理委員会は、下院の選挙を実施すると言っている。実施されれば、インラック派が圧勝することは間違いないと言われている。そこで民主党は、再び選挙を妨害して無効にする戦術をとっているようだ。しかし、これも憲法の規定により、二度続けて選挙をボイコットした政党は解散させられることになっている。民主党としては、その危険を冒してでも、下院の選挙を妨害し、インラック派の政権復帰を不可能にしようと考えているらしい。

しかし、そのエリート層にとって、大きな不安材料が持ち上がった。次の国王になることが約束されているマハ・ヴァジラロンコーン皇太子とタクシンがドイツで秘かに手を結んだという情報が入ってきたのだ。御承知の通り、タイでは国王の権威は絶対的である。その国王がタクシンと手を結べば、どんなことが待ち受けているか。それを考えると、さしも厚顔のタイのエリートでも眠れないのだという。

(参考)The future of Thailand's elite Helplessly hoping Economist









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