安倍首相の価値観外交

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安倍首相が、五月の連休のヨーロッパ歴訪中に、しきりと(ヨーロッパ諸国との)価値観の共有を強調していた。そこで安倍首相がいっていた価値観というのは、自由や民主主義といった欧米社会が歴史的に培ってきた「普遍的な」価値観のことをさしているのだろうと思う。もしそうであれば、そのこと自体は評価すべきことで、安倍首相には、今後もそうした価値観の実現に向かってまい進して欲しいと期待したいところだ。

しかし、安倍首相がこのところ行っている政治的言動を見る限りでは、彼が上述のような価値観に忠実だとはとても思えない。たとえば、彼は憲法解釈の見直しをめぐって、立憲主義の原則を平然と無視するような言動をしている。また、憲法改正をめぐっては、復古的な理念への回帰を主張してはばからない。彼が日ごろ声を大にして叫んでいる「戦後レジームからの脱却」ということからして、戦後民主主義を否定しようとする意図が明白である。

そんなわけであるから、安倍首相が西欧諸国の指導者との間で、共通の価値観を云々するところをみせられると、どこまで本気かいな、と思わせられずにはおれない。安倍首相はそういうことで、中国がこの価値観を共有していないということを浮かび上がらせ、したがって中国は日欧共通の敵だということを強調したいのだと思うのだが、しかし、(中国を敵視するあまりに)口先だけでそういっているとしたら、いずれ馬脚が現れるというものだ。

対外的に民主主義の価値観を重んじていると主張するなら、国内政治の舞台でも、是非そうした価値観を追求して欲しいものだ。そうではなく、相手によって言葉を使い分けるようでは、いくら価値観の共有といっても、そらぞらしく聞こえるだけだ。







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