貞観彫刻13:教王護国寺の五大明王像

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(教王護国寺講堂不動明王像、木造彩色、像高173cm)

明王信仰は密教の登場に伴って生まれたもので、したがって明王像も平安時代以降に現れる。教王護国寺講堂に伝えられている五代明王像は、明王像の中でも最も古いものである。不動明王を中心にして、降三世、軍荼利、大威徳、金剛夜叉の諸明王が阿取り囲むようにして立っている。いずれも、真言呪文の力を象徴する憤怒相である。

教王護国寺には、御影堂にも不動明王像が伝わっているが、講堂のものが古いと考えられる。総髪に結った弁髪を左肩に垂れ、両眼を開いているところ、また羂索を持つ左手をかなり外側に張り出しているところなどは両者共通だが、講堂のものの方が、彫口が荒々しい。なお、儀軌によれば、不動明王は、右手に降伏しないものを切る利剣を、左手に悪い人間をしばる羂索を持つこととされている。

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(降三世明王、木造彩色、像高174cm)

降三世明王とは三千世界の支配者という意味である。三面八臂の姿で、正面は憤怒相をあらわし、手前の二本の腕で、降三世印という特殊な印相を結んでいる。また両足で、大自在天とその妻烏摩妃を踏みつけているが、これは降三世明王にだけ見られる特徴である。

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(軍荼利明王、木造彩色、像高202cm)

軍荼利明王は、疫病をもたらす毘那夜迦天を調伏すると解釈されている。一面八臂の姿で、正面には三つの眼をつけ、手前の二本の腕で三鈷印を結び、両足で、亀頭神を踏みつけているのが特徴である。

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